読みたいもの…ある??

□扉の向こう
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「ナギ…「来るな。」ッ!!」

暗い瞳は鋭くて、身がすくむ。
声をかけたくても、喉が情けない音をたてるだけで全く声が出ない。


「…この船に乗り続けたけりゃ、相手に深入りしないことだ…。」



そう言ったきり、ナギは口を閉ざした。




やっと見つけた入り口だった。


探し回って、漸く辿り着いたナギへ繋がる入り口だった。






夜の船は寒い。
騒ぐみんなに混ざる気になれず、船尾で海を眺めていた。


月光が照らす海は幻想的だ。


揺らめく視界。
それがどうやら船のせいだけでないことが漸くわかった。



船が揺れた。
それにつられて頬に幾筋も雨が降る。


視界は曇る。真っ暗に。



見つけた入り口は…





――ドアノブが無かった。





欲張りになっていく…。


好きになればなるほどに。

目が合えば、声が聞きたくなる。
声が聞こえたら、話したくなる。
話をしたら笑顔が見たくなる。


笑顔を見たら、それを独占したくなる。



「クッウゥッ!!!!」


重く苦しくなる胸が、頭が、感情が。
行き場を失うそれが、一気に弾けて止まらなくなった。




深入りって何!?
好きな人を理解したいと思うのは、いけないことなの!?
抱えているものを手助けすることは、煩わしいことなの!?




「…沙弥、食わねぇのか?船長に…ッ!?お前…。」





やって来たのは、わだかまりを投げ棄てていった張本人だった。


「…何泣いてンだ…。」


探るような目に、労る声音が、今は辛い。


涙をぬぐってくれようとした繊細な指先を…素直に受け入れられなかった…。


「…何で逃げンだよ。」
「…この船のルールは…"深入りしないこと"なんでしょ?」


見開かれた鳶色の瞳。
伸ばしはしても、意図を無し得なかった右手はさ迷うだけ。



「沙弥…。」
「…ナギには関係無い。」
「ッ!?お前…」


ナギが睨み付けてきた。
腹の底に響くような、憤怒の声音。


何で、


「さ「自分ばっかりッ!!」はあ!?」



「何で自分は知ろうとするくせに、ナギは私に教えてくれないのよ!!」
「沙弥ッ!?」


呆気にとられて目を白黒させるナギに沙弥がさらに言葉尻を強め一方的に思いをぶつけ始めた。






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