王子様のプロポーズ

□デュエット
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「私が…ですか?」


カノンが目をしばたかせると、ヘンリーがトルコマリンの瞳を穏やかに細める。



フィリップ王国のヘンリーと結ばれ結婚式の日取りも決まり国は明るい。


一次は破局を思わせた二人の恋は無事に成就。
こうして、共に日々を歩んでいる。


そんなカノンに、ヘンリーからある依頼が舞い込んだのだった。



それが、一月後にある王室のパーティーで、歌って貰えないか…と言うもの。


それが先のカノンの一言の要因だった。



「父上が、君が"フィリップの歌姫"と二つ名を持っていると知っていて、是非…と言うものだから…ね。」



確かに、そんな名前をつけられた覚えがある。
2、3年前にサラに勧められて何気無く出場した歌唱大会で最優秀だった。


最優秀間違いなし、とまで言われていた有力候補を抑え、堂々の一番。
誰もが圧巻の歌声は来賓として招かれていたフィリップの国王も聞いていた。



最近偶然開いたその大会のパンフレットでそれがカノンだったと気付き、ヘンリーに打診を頼んだのだ。


「お義父様が…。」
「あぁ、それから…母も。もう一度聞きたいと泣き付いてきて今大変なんだ。」

肩を竦めたヘンリーにカノンは困惑した。


あれは、ただ軽い気持ちで歌っただけで、偶々だ。


あの日と同じに歌いきれると言うには、怪しい。


それに…1ヶ月の猶予で歌を何処まで仕上げられるかわからない。


あの時は、3ヶ月の猶予がありなんとかなったが…1ヶ月は…。


でも…


――素晴らしい歌だったと 国王からの御言葉です。

役人伝で聞いた国王からの感想に心が震えたのを今も覚えている。


「ッ是非ッ!!歌わせてくださいッ!!」
「フフッ、そう言ってくれると思った…。」


そう言ってヘンリーはカノンに手を差し出した。


「…来て。そうと決まれば選曲しなくちゃ…ね?」




ヘンリーに促され、ある部屋に導かれた。


そこは王室の図書館…の隣の部屋。


「ヘンリー…あの、ここは?」
「楽譜の保管庫だよ…。弦楽器、金管楽器、木管楽器…全部司書が管理して分類してくれてる。そして、ここが…。」


――声楽の楽譜。



手を引かれ案内されたそこは、他よりは域が狭いながらも、棚を埋め尽くすように置かれた楽譜。


「す、凄いです!!」
「そうかな…。…50年前シャルル王国から楽譜を譲り受けた物もあるからね…。」


棚を見上げたヘンリーが穏やかに笑う。


「シャルル…煤I確か…エドワード・ルヴァンソワ様…ですよね?芸術に長けた方だったとお聞きしてます…。」
「…へぇ、ちゃんと勉強してる。偉いね、"ラッシー"。」
「買憶…!?もうッ!!ヘンリー!!」



破顔したヘンリーにカノンは頬をふくらませたか、勝ち目はないと直ぐ引き下がり楽譜を見詰めた。





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