ハイキュー!!

□私の兄は烏野排球部―二年生編―
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ver.縁下力

最近兄の表情が変わった。表情と言うより、雰囲気が変わった。

昔からしっかりしていたけど、何と言うか…より、頼もしくなったと言うか…。
「鈴、手が止まってるよ?」「髪!!」

不思議そうに見てくる兄。今日は勉強を見てもらっていたのだ。

「ごめん、兄さん。」
「疲れた?3時間もやってたし、休もうか。」

クンと伸びをする兄。手元の問題集はかなり進んでいた。流石だ。

「で?何かあったの?」

何と言うわけではない…。ん?と聞いてくる兄に苦笑した。

「兄さん、変わったな…って思って。」

怪訝そうにした兄。
シャーペンを置いて、頬杖をついて兄をしげしげと見詰める。

「やっぱりあの時、"休暇"とってよかったね?」
「…鈴。」

兄は、烏飼監督の復帰と共に酷しくなったバレーの練習を、何かとそれらしい理由を付けて休んだ。


家でゴロゴロした。

出掛けて見付かったら気不味くてだと思う…。


だから兄に負い目を感じさせないよう、毎日聞いた…

―今日も家に居てくれるでしょ?兄さん!!


自己満足と言われたらそれまで。
偽善者と言われたらそれまで。

でも……そう言わないと、そう言って逃げ道を作ってあげないと、兄が壊れそうだった。

"休暇"を経て、兄は復帰した。

よかったと思う。

弱い兄を見たから、あの日からどれだけ強くなったか分かる。


「兄さん、明日も部活?」
「え、そうだよ?」

少し気不味そうにした兄に抱き付いた。

「狽っ!?す、鈴!?」
「頑張りすぎないでね?」

ヒクンと震えた兄を抱き締めて瞳を閉じれば、微かに制汗剤の香りがする。

「鈴…。ありがとう。」

抱き締め返されて、やっぱり…と心の中で笑う鈴。


――兄さん、がっしりしてる♪


「?鈴?何喜んでるの?」
「いいの、兄さんは何も知らなくて。私さえ知ってればいいの!!」




ちょっと溢れた涙は、兄への餞(ハナムケ)。

END
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