恋に落ちた海賊王
□海賊酒場の女主人
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シリウスが顔を揃えた頃には店内は人で埋まり、外に簡易テーブルが置かれていた。
「おっ!?シリウスが来たぜ」「よー!!久しぶりじゃねぇかリュウガ!!」
わっと、なった酒場。
それにリュウガがこたえていると、大きなトレイに20ほどのジョッキを頭と両手にのせた一人の女性が現れた。
「よう!久しぶりだなカノン、会いたかったぜ?」
慣れたようにトレイを机に置き、それを配った後、女は前髪をかきあげてニヤリ笑った。
「ハッ?バカを言いなさんな、1年半も来なかったってぇのに会いたかったってかい?」
「おいおい、そりやぁねぇぜカノン。」
どっと笑いが起きた。
「ほら、いつもンとこに席とっておいたよ。立ち話はお仕舞いにして飲んで食べてっとくれ。」
「あー、カノン。悪いが椅子をもう1脚…。」
そう言って後ろを振り返ったリュウガ。
しかし、カノンはリュウガの肩をペシリと軽く叩いたのだった。
「バカだねアンタも。面子が一人増えたのくらい知ってるさ!!確か…トワだろ?」
「おったまげたな!?知ってたのかよ?」
名前さえ言って見せたカノンはニヤリ笑って、リュウガに言いはなった。
「アンタの話は嫌でも耳にするさ。」
通されたのは、店のカウンターよりのスペース。
6組のナイフ、フォーク、スプーン、6枚の器等だ。
「たんと、食べとくれ?」
そう言ってカノンはシンを呼び止めた。
「シン、珍しいワインが入ってるよ。」
「なら、それを貰う。」
「お供はチェダーが合うけど、どうする?」
「それで頼む。」
ハイよ、と言ってリュウガにはいつものワインを注ぎ次はソウシ。
「ソウシ、カモメ便で頼まれてた薬草、今晩中に届くから。来たら引き取っとくれ。」
「ありがとうカノンさん。いつもすみません。」
首もとに手をおいて苦笑したソウシ。
構わないさ、と軽く受け流し小瓶を手渡した。
「これは?」
「激辛スパイス。ナギに渡して飯に添えてもらえばいいさ。」
「ありがとう。」
にっこり笑った天然たらしに動じること無く、カノンは酒を注いでトワに笑いかけた。
「随分華奢な子が入ったもんだよ。トワだっけ?」
「あっ、はい!!よろしくどうぞ!」
律儀な海賊さんだね〜。
カノンがクツクツ笑い、酒をすすめた。
「リュウガはザルだから、相手は辛いだろうね。早く酒に強くなんなよ坊や…。」「Σわっ///!?ハヒッ///!!」
油断していたトワの肩に手を置き、吐息混じりに囁いたカノン。
その艶っぽい声音に、トワは赤面した。
「あーら?坊やには少し刺激が強かったかい?」
「い、いいいいぇッ///!!」
耳を覆ったトワに酒場がうるさくなった。
「ほぅ…。この前来たときお前はあれをやられたわけか。」
「Σッ!!シッ、シン!!」
「貴様は他人の名前もろくに覚えられないのか。やはり猿だな。」
遠目にトワとカノンの様子をうかがっていたハヤテ。それを見ていたシンがいい酒の肴を見つけた…と、言わんばかりにつついたのだった。
ここにハヤテが初めて来た時、あれをやられた。
「てめえ…」
「フン。」
二人の間に怪しい雲行きが漂う。
そんな中。カウンターで1人静かにウォッカを飲んでいる背中にカノンはそっと触れた。
「ナギ。」
「遅せぇ…。」
振り返った鳶色の瞳に少し焼きもちの色を認め、カノンは大胆にもキスをした。しかし、騒ぐ連中には気付かれることはない。
互いに舌を絡めた後、カノンはナギの唇を甘噛みして離れた。
ナギの頬を、確かめるように包み込んで、カノンは囁く。
「詫び代だよ。」
「…前金の間違いだろ。」
「ククッ、独占力の強い男は、嫌いじゃないよ?」
うっすら破顔したナギに再び口付け、カノンはカウンターの向かいに回った。
「まぁたアンタの賞金額が上がってたよ。捕まりゃしないかハラハラしてる。」
カモミールティーを淹れ、心配の色を濃くしてカノンはナギを見つめた。
「捕まってたまるかよ…」
酒を煽りグラスを空にしてナギは目を細めた。
「料理作れなくなるし…。何より…こうしてお前に会えなくなるのも詰まらねぇしな?」
「言ってくれるじゃないか、この色男。」
2人肩を揺らして笑った。
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