恋に落ちた海賊王

□下っ端と女
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「私にはないものを持っていたんです、彼。」


クイッと一口、酒を含むとカノンはクスリと笑い、ステージを振り返った。


「…トワが?」


目を細めたシンが、カノンの視線を追ってトワを見る。


そこには、皆と戯れ、もみくしゃにされて、笑っているトワ。


まるでどこまでも透明なその表情は、このシリウスのメンバーであることを疑いそうになる。


「ふふ、宝石じゃないですよ?」


焦らすように答えないカノンは、指に伝った酒を、ネットリと舐めとる。


その舌の這わせ方が、なんともセクシーで、4人は一瞬で心を鷲掴みされた。



近くでした、物が落ちる鈍い音は、カノンの色気に当てられたのだろう。


「トワが持っていたの?私たちは誰も持っていなかったのかい?」


優しく笑いかけたソウシ。肩越しに妖艶な微笑を覗かせ、カノンは足を組み直す。


スリットから覗いた女性らしいその脚は、男の心を誘惑して止まない。


「彼の物が一番、私には輝いて見えたのかも…。」
「気になる言い方だな?」


ナギが眉間にシワを寄せる。
するとカノンは、クスリと笑った。


髪をかきあげたとき、シャラリと鳴った金の腕輪。


この前トワが破落戸(ゴロツキ)からかっさらってきた金品の中に入っていたものでカノンに…と手渡していたものだ。


実のところ、トワが自分の小遣いで買ったものだったりする。


知ってか知らずか…。


カノンは嬉しそうに受け取り、お礼と言って、頬にキスを送っていた。


見てしまったナギ。
それを思い出し、ナギは机の下で、手を握った。



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