王子様のプロポーズ

□デュエット
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「出来れば、2曲以上がいいんだけど…?」


ヘンリーは楽譜を手に取りながら、そういった。


選曲の手を止め、カノンはヘンリーの顔をまじまじと見詰めた。


「2曲以上…。」
「あぁ。」


ニコニコしながら頬杖を付きヘンリーは楽譜を弄ぶ。そんなヘンリーの様子にカノンは途方にくれてしまった。


期待してくれている…と言う事なのだろう。
また、カノンの歌を聴きたいと言う王と女王も…。



「ヘンリー…。」
「なに…?」


この込み上げてくる不安をどう言い表せようか…。
音楽に精通した貴族たちを前に外せば絶対に気付かれる。


そして何より、自分だけでなく、フィリップ王室の名に、一生の汚点を残しかねない。


自分を罵られるなら未だしも、王室を巻き込みたくはない。


「ヘンリー…あの、私…」
「1人にはしないよ…。」



ハッとしてヘンリーを仰ぎ見ると、そのまま羽根のような口付けが舞い降りた。

「大丈夫。俺を信じて。」
「…ッ///!」



微笑を口許にのせると、ヘンリーは選曲すべく手を進めた。



「カノンはソプラノ…だよね。音域は3オクターブ上も出せる…でしょ?」
「狽・…どうして…。」



にっこり笑ったヘンリーは母上に聞いた…と言う。



「?どうしてお義母様?」
「さっきも言ったけど、君の声に心底惚れ込んでいたから、………調べたらしいよ?」

否。母はカノンの歌を何度も聞いていた。だから知っているのだ。


苦笑したヘンリーは母の興奮ぶりを思いだしていた。



――聞いて、ヘンリー!!カノンさんは、3オクターブ上も歌えるのよ!!
――…どうして母上がご存知なんですか…?


御忍びで追っかけをしていたらしく、自分の首を絞めてしまい、側近に諭されていた…。



「ふふっ、お義母様は時々お茶目ですよね♪」
「…つくづく俺は、祖父に似たと痛感するよ…。」


実はヘンリーの父、国王もまた、少しルーズな所がなくもない。


「ヘンリー、この曲は?」
「…いいね…。この曲はどう?」
「はい、歌いやすそうです。」


二人は楽しげに意見しあった。



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