雪の物語
□蒼き鋼を纏いし雪の騎士
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今日、こゆきのだい好きなおかあさんが天国に行っちゃった・・・
古いアパートの一室で黒いワンピースを着た5歳位の少女が母親が入っている棺の側に猫のぬいぐるみを抱き締めながら座っていた
「おかあさん・・・」
彼女は小雪、母親譲りの艶やかな黒髪にブルーサファイア色の瞳をしている
その瞳からポロポロと涙が流していた
彼女の母親は重い心臓病を患い、娘を残す形でこの世を去った
「結局ドナーが見つからなくって亡くなってしまうなんて・・・」
「可哀想にまだ若いっていうのに幼い娘さんがいるでしょう?」
「身内もいないから雪江さんが亡くなる前に施設に預けるってもう手続きをした様よ」
葬式に参列している者はヒソヒソと話をしているが幼い小雪にとってそれどころではなかった
自分の大好きな母親がいなくなり、とてつもない悲しみが襲った
優しい母親はもう居ない
泣いている時慰めてくれる母親はもう居ない
自分に笑顔を向けてくれる母親はもう居ない
彼女は本格的に泣きそうになった瞬間
「君がコユキか?」
「・・・え?」
突如男性の声が聞こえ振り向くとそこにいたのはサングラスに高級そうなスーツ姿の外国人がいた
「そう・・・だよ?おじさん、だれ?」
「私はトニー、君の“父親”だ」
「・・・えっ?」
“父親”と言う言葉に唖然し、周りにいた者達が驚いた
「施設にはもう話はつけてあるから一緒に暮らそう、荷物は業者に頼んで私の自宅に送らせる、葬式は早く終わらせて・・・」
「えっ?えぇ??」
一気に話せられて戸惑う小雪に見計らって彼女をよく可愛がっていた近所のおばさんが割り込んで来た
「ちょっとアンタ!小雪ちゃんが困っているじゃない!それに父親って言ってるけど本当はでっち上げで雪江さんが遺した財産目当てじゃないの!?」
「お・・・おばちゃん・・・」
小雪は近所のおばさんの後ろに隠れ込んだ
トニーはやれやれと紙を取り出した
「これは私とそこのいる子猫ちゃんとの親子関係であるか確かめるDNA鑑定書だ
判定の結果は97%・・・確実にその子の父親だ、それに私はそんなに金には困ってもないから気が強いマダム」
名刺を渡し、小雪の腕を掴み外に出て行ってしまった
「ど、どこにいくの・・・?」
「空港だよ、私の自家用機で向かうぞ」
小雪は訳が分からなく、そのままトニーに手を引かれて行ってしまった