秘めごと(夢小説)
□隣室からの誘惑 (彼目線)
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監視のために開けた穴だって言うのに、こんな真似に使うなんてな。
「んっ、ふっ、ん……」
―――また、始めやがったか……。
いつもと変わらない日常を過ごしていたある日、新しい毒見役が来ると言う話を聞いた。
蓋を開けてみればそれは男装をした幼馴染で。
京を離れてからそれほど経っていないというのに、久しぶりに見るアイツはどことなく大人びていて記憶のそれよりも幾分か綺麗になっている気がした。
こんな場所に弟の名を語り男装をして単身現れるなんて、事情があるに違いねぇ。
俺がしっかり守ってやらないとな。
兄貴風を吹かせてそう思っていた矢先、あのチャラ男にいいとこ全部持って行かれた。
あいつの目付役だと?
相部屋で毎晩二人きりで寝るだと?
ぜってー手ぇ出すだろ?
これはなんとしてでも阻止しねぇと…!
その決意を胸に、戦で武功を挙げその褒美にと二人の隣の部屋を与えてもらった。
秀吉が変なことをしないように壁に監視用の穴まで開けたはいいものの……。
―――結局、こうなるのかよ……。
人たらしと言われる本領を発揮するかのように、あっという間にエマを落としちまいやがった。
そうなれば年頃の男女が同じ部屋で生活を共にしている以上、親密な関係になっていくのに時間もそうかからなくて。
ガキの頃から知ってるあいつが秀吉の手によって女にされて、夜な夜な艶のある声をあげているなんて、正直我慢ならねぇ。
しかもそれを隣室で目の当たりにしちまうこの環境、生き地獄だろ。
けど、いくら頭から掛け布を被ったって、愛をささやき合う潜められた会話も、お互いの名を呼ぶ熱い息遣いも、肌が肌を打つ生々しい音も、聞こえちまうものは聞こえちまうし、……勃っちまうものは勃っちまう。
最初のうちは悶々と我慢していたこの俺だってやっぱ健全な男だし、そこに穴があったら覗きたいと思っちまう。
勃っちまったモノは鎮めなきゃなんねえし、 監視穴が覗き穴へと目的を変える。
…… やっべぇな、これ。
ヘタな春画見るよりも、相当抜ける。
そんなこんなで、罪悪感を感じつつ幼馴染と戦友の濡れ場を見ながら自身を慰めるのが、いつの間にか恒例のこととなっちまった。
「んっ、ふっ、ん……」
―――また、始めやがったか……。
いつもの穴から気配を消してこっそりとと隣室の様子を伺い見る。
後手に体を傾けた秀吉の足の間に顔を埋めるエマ……。
皮膚に吸い付く水音に、上下に動く頭。
時折なされる荒い息継ぎ。
あーあ、傍観者がいるってのにあんなに腰くねらせて、ったく、はしたねぇなぁ。
自分が覗き見ているという事実を棚に挙げて、心の中で独り言ちる。
エマの着物の裾が捲り上がり、俺の方に向けられた裸のケツを柔らかい表情でゆっくりと撫でる秀吉。
なんなんだよ、あの余裕さ。マジ気にくわねぇ。
内心で悪態をつきながら、やっぱりムクムクと頭を持ち上げるムスコに自然と手が伸びる。
エマのなかなか色気のあるケツと淫らに響く音に意識を集中して自分を慰めていると、不意に視線を感じた。
はっとして視線を上げると、秀吉が、こっちを見て、笑って、る?
っ!!
やっべぇ……!バレたのか?!
さっと身を隠し、早鐘を打つ胸を押さえながら息を殺し、隣の部屋の動きに意識を集中させる。
が、何もない。
気のせいだったのか……?
そう思ってほっと胸をなでおろした矢先……
秀吉「わんこくん」
そう呼ばれ、全身が一気に固まった。
秀吉「ねぇ、そこに居るんでしょ?今さら隠れなくてもいいよ。ずっと覗いてたの、前から知ってたし」
犬千代「………………」
秀吉「犬千代、こっちの部屋来て。ちょっと話そ」
犬千代「………………」
俺、終わったな……。いったい何を言われるんだ……。
幼馴染もいけすかねぇ戦友も一気に失うのか……。
思い足を引きずりながら隣室へと向かった。
つづく
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