秘めごと(夢小説)

□信玄様お誕生日物語・裏
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今日は、信玄様のお誕生日。

広間では贅を尽くした宴が開かれており、次々と招待客や家臣が献上品を捧げている。

趣向を凝らした品々に比べ、私が用意できたものは、信玄様の好物のきなこ餅。

周りを見てもこんな安っぽい献上品なんて用意している人はいなくて。
恥ずかしくて情けなくて、後ろ手にこっそりと隠す。

と、信玄様からお声がかかった。

「おい、エマ!今日はいつものやつはねぇのか?」

「いつもの、と言いますと……?」

「俺の好物に決まってるだろ?あれなしじゃ祝いの席といえどめでたさが半減だ」

そう微笑む信玄様に私ははちきれんばかりの笑顔で隠していたきなこ餅を差し出した。


……この方は、いつだって、そう。
おおらかでありながら、どんな些細なことでも見逃さず気に掛けてくれる。

私が信玄様に献上できるものなんて、たかが知れてるけど、本当に好きな人のためにと大事に取っておいたあれ。

喜んでもらえるかも分からないし、まったく独りよがりな思いなのは百も承知だけど……。

この方になら捧げてもいい、いや、捧げたいと決心がついた―――。

「信玄様、あの今夜、お時間を頂いてもかまいませんか?」

「あぁ、構わんがお前、一体どうしたと……」

「あの、ありがとうございます!それでは、後ほど寝所にお邪魔させていただきますね。失礼します!」

「あ、おう。 ……ったく、いってぇどうしたんだ、エマのやつ……疾風のように逃げ出して」

はぁ、はぁ、はぁ。

緊張した……。

虚を突かれたような瞳が居たたまれなくて、信玄様の目の前から飛び出してしまった。

でも、もう後戻りはできないし、あとは腹を括るだけ……。

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