秘めごと(夢小説)

□三成様お誕生日物語・表&裏
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夕日の差す門前。

城での勤めが終わって門前までの道を秀吉と歩く。

他愛無い会話をしながら、探すように目線を走らせると、門に寄りかかっていた人物が足音で気づいたのか弾かれたように顔を上げ、俺を見つけて破顔する。

夕焼けの中に咲くその眩しい笑顔に心奪われても、それをわざわざ伝えてやることなどしない。

エマ「秀吉様、三成様、お勤めご苦労様でした!」

秀吉「ありがと、エマちゃん。君もお疲れ様。じゃあ、三成、ここで。明日はエマちゃんと楽しく過ごすんだよ」

エマと恋仲になってしばらくして、こうして勤め帰りに待ち合わせ一緒の屋敷へ帰るのはもう秀吉をはじめ周知の事実となっていた。

背を向けて手を振りながら去って行く秀吉にどこか解せない想いを抱きながらも、急に右腕にまとわり付いた重みにすぐに意識を持っていかれる。

エマ「三成様、お疲れ様でした。今日は一日中会えなくて寂しかったです」

俺を見つけた瞬間からうずうずと飛びつきたがっているのが丸出しだったこいつは、秀吉が去るとすぐに俺の腕に絡むように身を寄せてきた。

三成「甘えるな。城には遊びできているわけではない。どうせ屋敷に帰ればアンタの間抜け面をいやでも見なければならない。少しは息抜きをさせろ」

……勤務中、俺も気づけばアンタの姿を探してしまう、なんて本音を漏らしたらこいつは一体どんな表情をするのか。

もうっ、っと可愛らしく唇を突き出す様に口許がほころびかけるも、急いでへの字に引き結ぶ。

……まったくこいつは、犬みたいだな。

どんなにぞんざいに扱っても、どんなに悪態をついても、俺から離れず倍の笑顔を返してくる。

歩き出す俺に一寸の隙もなくまとわり付く恋人からは、勢いよく左右に振れる尻尾が見えるようで。
おもわずくしゃくしゃに頭を撫でてやりたい衝動に駆られるが、……やはり、してやらない。

そんな俺の天の邪鬼な心を知ってか知らずか、エマは鈴のような声で無邪気に続ける。

エマ「ねえ、三成様。明日はお弁当を持ってお出かけしませんか?」

三成「どうして俺が。それにアンタ、勤めがあるんじゃないのか」

信長様から唐突にもらった休み。
だが明日はただの平日だし、エマも勤めがあるだろうからと屋敷にこもり溜まった書を一日中読んでいようと思っていた。

エマ「三成様、明日お休み頂いたんですよね?実は私もお休みを頂いたので、二人でゆっくりしましょうよ。秀吉様に、二人で出かけたら?って、静かで景色がいい場所を教えていただいたんですよ」

三成「む、秀吉……?」

エマ「ええ、三成と楽しんでおいで、っておっしゃって。秀吉様の好意を無下になんて、できないですよね?」

期待を込めて見上げるクルリとした双眼。
帰り際に秀吉の放った一言はこの事だったのかと、ようやく腑に落ちた。

もしかしたらこの偶然に重なった俺とこいつの休日も秀吉が信長様に取り計らって……?
どこか確信めきながら、いいだろう、とため息交じりに返事をすれば、一層とエマの表情がほころぶ。

間近で見た笑顔に頬が熱くなるのを感じながらも、夕日のせいだと自分に言い聞かせ、屋敷までの道のりを小さな歩幅にあわせてゆっくりと歩いた。



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