秘めごと(夢小説)
□風魔と祝う誕生日の夜
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「「エマ、お誕生日おめでとう〜!」」
その夜、ここ、躑躅ヶ先館では城をあげてエマの誕生日を祝う宴が開かれていた。
幸村と佐助が率先して計画を立て、才蔵や信玄までをも巻き込んで無礼講といわんばかりに宴は盛り上がる様子を見せていた。
エマ「わぁーっ!!皆さん、本当にありがとうございます。一介の料理人でしかない私のために、こんなに盛大な宴を開いていただいて…。なんとお礼を言えばいいのか……!」
信玄「謙遜するな、エマ。お前の料理にはみんな感謝してるんだ。それに料理だけじゃねぇ、お前の笑顔のおかげで城の雰囲気だって明るいものになった。なぁ、才蔵」
才蔵「別に団子さえ作ってくれれば笑顔があってもなくても変わんないですけどね」
幸村「才蔵、失礼なことを言うな。エマが来てからというもの、お前の雰囲気が柔らかくなったともっぱらの評判だぞ」
才蔵「は?何のこと」
佐助「先生が柔らかく??団子の食べすぎですか?」
幸村「確かに才蔵は団子を食べすぎだ。まあ、おれもエマのどぅなっつは誰にも譲る気はないけどな」
エマ「喜んでいただけるのならいつだってお作りいたしますよ」
幸村「ああ、ありがてぇ。だが今日はお前を労い祝う日だ。さあ、エマ、食え食え!今日はお前のために俺も炊事場に入らせてもらったんだ」
エマ「あ、やっぱり!このお吸い物の中のねぎ、ふふ、幸村様が頑張って切ってくれたのかな、と思っていました」
幸村「あ、おお、笑うな。不恰好でわりぃが心だけは込めたつもりだ」
エマ「ふふっ、とっても美味しいです。幸村様の温かい人柄が表れているようで、私は好きですよ?」
才蔵「あーあ、見苦しいからそういうのよそでやって」
わいわいと楽しい時間を過ごしていると、ビューっと荒い風が室内に吹き込み行灯の火が消え、差し込む月明かりの頼りなげない光の下、気が付けばエマの目の前には闇色の忍装束に身を包んだ男が立っていた。
謎の男「皆さん、お楽しみのとこ、お邪魔しますよ」
幸村「お前はッ!」
信玄「ん、何だ?敵か?」
謎の男「あ、才蔵さーーん!せっかくの宴に僕のこと呼んでくれないなんて、心外だなぁ。だけどそんなつれないところが好きなんですけどねー!あははーっ!」
才蔵「まためんどくさいのがきたね」
エマ「風、魔さん………?」
風魔「エマさーーん!僕だけ仲間はずれにするなんて!あなたのお誕生日、僕にもお祝いさせてくださいよー!」
エマ「あっ……」
そう言うが早いか、風魔はエマを横抱きにし、広間の入り口へと瞬く間に移動していた。
幸村「お前、エマを離せっ!」
風魔「いやだなぁ、幸村さん。そんな物騒なものを僕に向けて。あなたたちの可愛いお姫様に傷がついたらどうするんですか?」
幸村「くっ……!」
広間中が騒然とする中、才蔵だけは微動だにせず強い瞳で風魔を見据える。
風魔「あぁっ、才蔵さん!そんな風に見つめられたらゾクゾクしちゃうなぁっ!今すぐに殺したくなっちゃいますよっ!」
才蔵「…………」
風魔「ふふふ、だけど今日は我慢しないと。エマさんを悦ばせるという使命があるのだから!というわけで、みんなの大好きなエマさん、今日は僕が攫っちゃいますねー!」
幸村「おいっ!待てっ!!」
幸村の叫び声や空しく、風魔はエマを抱えたまま闇夜に飛び立ちあっという間に姿を消した。
幸村「才蔵!後を追うぞ!!……?おい、何を悠長に構えているんだ?エマが攫われたんだぞ!」
才蔵「……攫われた?逢瀬に出かけたの間違いじゃないの?」
幸村「は?何を言っている?」
才蔵「気づかなかった?エマ、ずっと上の空だったし、ソワソワと何かを待ってるみたいに見えた。風魔が現れた時だって怖がってるような演技してたけど、一瞬嬉しそうに顔がほころんだの、隠しきれてなかったし」
信玄「なんだ、エマはあの忍と恋仲だったのか?はは、幸村、失恋したな!」
幸村「し、失恋とは、なな、何のことですか、御屋形様!おい、才蔵、それは真(まこと)か?!」
才蔵「ん。あの様子じゃしばらく帰ってこないんじゃない?エマが傷つけられる心配もなさそうだし。放っておけばそのうち帰ってくるでしょ。全く派手好きな忍がいたもんだ。さ、せっかくのご馳走、もったいないし、食べるよ」
幸村「ん、ああ、そうだな。お前がそういうなら大丈夫なのか?まぁ、食うか!よーし才蔵!飲み比べだ!!」
才蔵「はぁ、こっちもめんどくさかったか。……しょうがないね、つきあってやるよ」
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