秘めごと(夢小説)

□秀吉様お誕生日物語
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秀吉「こっちの桜色の着物と、菜の花色の着物、どっちもエマちゃんに似合うからな〜。う〜ん、迷っちゃうな」

連れてこられた呉服屋で、両方の生地を私に当ててウンウンと唸っている秀吉様に柔らかく微笑む。

エマ「どちらもとっても素敵だし、秀吉様が選んでくださるものなら、何でも嬉しいですよ?」


―――時は遡って秀吉様のお誕生日前日の夜。

エマ「秀吉様、明日のお誕生日、何かしたいことや欲しいものってありますか?」

床に就き、秀吉様の肩に頭を預けながら、ゆったりと問いかけると、私の背をさすりながら視線を合わせ、秀吉様は続ける。

秀吉「そういえば、明日が誕生日かぁ。言われるまですっかり忘れてたよ。……エマちゃんと一緒に過ごせれば、他に何もいらないけど、それじゃダメ、かな?」

目を細めて甘く微笑むその表情に胸がきゅっと引き絞られるけれど、大好きな人が生まれたその日は何か特別なことをして過ごしたい。

エマ「そうおっしゃってくれるのは嬉しいけど……、ダメです!一年に一度の大切な日だし、私にできることは限られているけれど……。秀吉様、もっと欲張りになって、一番したいこと、一緒にしましょ?」

秀吉「ふふっ、そっかぁ。そんな風に思ってくれてるのなら、じゃあ……、城下町で買い物に付き合ってもらおうかな。……でも、エマちゃんとだったら何でも楽しい、ってのは本音だからね?」

そう瞳を見つめられ念を押されたあと、柔らかく唇が重なり、胸元へと引き寄せられる。
愛しい人の鼓動を頬で感じながら、幸せな気分で、眠りへと落ちた。


そうして秀吉様のお誕生日当日。

城下町に到着して――。
秀吉様の欲しいもの、たくさん見て回って、たくさん買ってあげたいと意気込んでいた私の出鼻はすぐに挫かれてしまった。

秀吉「エマちゃんが俺の選んだ着物や小物を纏って綺麗になるのを見るのが、俺の一番欲しいものなんだ」

そう屈託のない笑顔で言われてしまえば、何の反論も出来ずにこの日一日、秀吉様の着せ替え人形と化すしかなくて。

それだけならまだしも、秀吉さまが私のために吟味してくれた品々をいざ買おうと思えば、いろいろと理由をつけて私に絶対にお代を払わせてはくれない。

エマ「これじゃ秀吉様の誕生日なのに私が甘やかされているみたいです」

既に立ち寄った小間物屋では、繊細な模様が織り込まれた真っ赤な絹の髪結いりぼん、そして自分では選ばないような濃い赤の口紅を買って貰っていた。


抗議するように唇を尖らせれば、

秀吉「いいんだよ。……二人っきりになったらエマちゃんにして欲しいことあるんだ。その時のために、大事なお願いはと取っておこうと思って」

エマ「それって、一体……?」

秀吉「今はまだ内緒。その方が、ドキドキするでしょ?」

そう唇に人差し指をあて茶目っ気たっぷりに片目を閉じるその仕草が可愛くて、

(もうっ……、一体どこまで好きにさせるんだろう……)

歯がゆい気持ちと共に、こんなに素敵な人が恋人なんだと誇らしくなる気持ちが同時に湧きあがり、胸の内がくすぐったくてしょうがない。

秀吉「決めた!桃色の着物にしよう!」

そう満面の笑顔で言う秀吉さまに、私も同じぐらい大きな笑顔を返した。


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