番外編
□綱吉の告(酷?)白 その1と2
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書きたかっただけ。
集まった守護者をみて綱吉は緊張していた。主に恐怖と…………恐怖で。
非常時のときはとても頼もしいのだが、如何せん日頃の彼らの言動のせいか、執務室にこうも集まられると破壊活動をされそうで、怖い。いや呼んだのは綱吉なのだが。
つい習慣で引き出しの中の手袋を取り出してしまった自分は悪くないと思う。
「ツナ〜?どうしたんだよ変な顔して。しかも手袋もだして、抗争でもいくのか?」
「え?あ、いや、そういうことじゃないから山本時雨金時出さないで獄寺君もダイナマイトしまって。」
そわそわと獲物を取り出し始めた綱吉自慢の親友達を片手をあげて制す。
抗争、綱吉にとってはそれより怖い。
もうすでにスーツの下は冷や汗でびっしょりだ。
「十代目、大丈夫ですか?……汗が。」
「き、気のせいじゃない?」
おっと顔にも出ていたようだ。こんなんじゃリボーンに怒られる。
「極限顔色が悪いぞ!」
「だ、大丈夫ですよ。了平さん。」
ただちょっと悪寒が、するだけで。
綱吉は努めて笑顔で返す。しかしリボーンに鍛えられた表情筋は仕事以外では正直過ぎるようで、自分でもひきつっているのがわかる。つまりばれている。
山本は笑顔だが明らかに何かあるなという顔をしているし、獄寺と笹川には純粋に心配されている。心が痛い。
クロームは事情を知っている筈なのにいつになくにこにこしている。……何で?
山本も気になったらしく「クローム、いや骸?……やっぱ、クロームだよな。どうした?」と首を傾げている。
綱吉は彼らにこれから話さねばならないことを考えると、ゾッとする。いろんな意味で。
だが、今現在何よりも綱吉を総毛立たせているのは、
「ねぇ、綱吉。」
「ヒッ、雲雀さん。」
一人だけ離れて壁に凭れているこの御方である。
大げさにびくつく綱吉を雲雀がおや、と訝しげに見る。
それもそのはず、綱吉も成長したのだ。今は中学の頃のように無意味にびびったりしない。少なくとも通りすがりに笑顔で挨拶できる程度の度胸はある。あの雲雀にだ。綱吉自身一番成長を実感するのは雲雀相手かもしれないと密かに思っている。まぁ、頭が上がらないのは変わらないのだが。
だが今回は、ちょっと?後ろめたいのだ。その上雲雀に咬み殺される未来が待っていると思うとびびりたくもなる。
「僕は忙しいんだ。早くしなよ。でないと」
「はいすいませんごめんなさい。」
今はお願いだからその先の単語を言わないでほしい。
……もう、覚悟を決めるしかないだろう。
綱吉は目を閉じ、落ち着く為に深呼吸をした。
「今日はその、話があってですね。……っと、その前に獄寺君、とりあえず君は座って。」
「ヘ?はぁ。」
シャマルの言葉を思いだし、綱吉は被害を食い止めるため獄寺を座らせた。
獄寺はきょとんとして、言われるがままソファに腰を下ろす。それに便乗して、じゃ、俺も、と山本ももうひとつのソファに座った。
ちなみにこのソファ、もっぱら綱吉の仮眠用か山本のサボリ用である。リボーンもたまにちょこんと座っている。
綱吉は執務机の上で手を組んで改めて覚悟を決める。……このあと始まる阿鼻叫喚に。
「その、驚かないでほしいんだけどさ。」
綱吉のいつになく真剣な(綱吉本人は恐怖している)表情に守護者側(クローム除く)にも緊迫した空気が漂う。
「俺、子供を引き取ることにしたんだ。娘として。」
………………。
……………………………。
…………………………………………。
「じゅ、十代目?今日はエイプリルフールでは……」
「…………。」
長い沈黙の末、獄寺君が笑い飛ばそうと入れた苦しい突っ込みに綱吉はそっと目を反らした。
その瞬間、
バターンッッ!
「ご、獄寺君!」
ソファの間にある重厚な作りのローテーブルにすごい勢いで獄寺君の頭、というよりデコが接触した。何とも器用な気絶の仕方である。
「ワオ。」
「それは極限本当か!?」
「……まじかー。」
慌ててソファに駆け寄る綱吉に聞こえた三種類の声のうちワオ。が獄寺に向けられた物であることを綱吉は切に願った。
だが、現実はそう甘くなく、
ヒュンッ
「ぎゃぁ!」
ソファにあと一歩のところで銀色の物質に道を阻まれた。立ち止まるのがあと一瞬遅かったら脳天かちわるレベルの打撃が加えられていた。
綱吉は先手必勝と両手を挙げて降参のポーズをとる。そして、
「すいません。雲雀さん。ごめんなさいごめんなさいすいません。」
謝り倒した。
仕事のときはこんな真似できないがこの面子ではむしろ恒例だ。
この場合、他の守護者に助けは期待できない。呼べばこれまた恒例守護者対決が勃発してこの部屋は天に召される。ちなみに九代目から譲り受けてから既に四回ほど召された。
「謝ってすむくらいなら警察は要らないんだよ、沢田綱吉。」
「…………はい。」
いや俺達マフィアだろっ。存在自体が犯罪だよ!と綱吉は思いきり突っ込みたかったが、そんなことは寿命を縮めるだけとわかりきっているのでぐっとこらえた。
雲雀は綱吉の殊勝な態度に機嫌を良くしたのか悪くしたのか、トンファーを構えたまま薄く笑う。殺気がおもくそ肌をさす。泣きそうだ。
そして、外野?もそろそろ黙ってない。
「ぬっ、極限ファイトかっ!?俺も混ぜろ!」
「いやいや先輩、ちょっと落ち着こうぜ。」
「いやいやいや山本も時雨金時抜かないで何ちゃっかりやる気満々なの!?」
そう、助けを呼ばなくてもこうなるのだ。
雲雀がおもむろに、
「君、ほうれんそうって言葉、知ってる?」
「……ほ、報告連絡相談です。」
まさかこの人にそんな常識的なことを聞かれることになるとは。人生なにがあるかわからない。
「そうだよ。全くいい度胸だね。」
「す、すいません。……でも、報告は今していますし、それに雲雀さんはいつも報告すら……すいませんごめんなさいトンファー下ろして下さいっっ!」
途中で銀色の物体がチャキ、と音をたてたので綱吉は即座に反論を謝罪に切り替える。
雲雀はさらに笑みを深め、
「この僕に事後報告なんて、僕も随分なめられたものだ。」
「あの、今回は衝動、というか、なりゆき、というか。」
「ははっ、なんかツナらしいのな。」
「……山本。」
なんだそれは。流されやすいといいたいのか。
ふいにがばりっ、と音がした。
「はっ!十代目っ!」
「うわー獄寺君もう少し寝ててくれてもよかったのに!」
爆弾男のお目覚めである。
おでこが赤く腫れていて、せっかくのイケメンが台無しだ。
獄寺は降参ポーズの綱吉をみて、次いで雲雀を見た。瞬時に獄寺の眉がつり上がり、恐ろしい形相になる。
綱吉はこの後の獄寺の行動が予測できてしまい、つい遠い目をしてしまった。
こういう場合、獄寺は綱吉の言葉を聞かない、というか聞こえてない。
「ご、獄寺く」
「てめぇ、雲雀!十代目に何してやがるっ!」
「説教。」
間違っちゃいないが絵面がバイオレンス過ぎる。
綱吉は獄寺の次の言葉を予想しこの部屋の末路を悟った。
「果てろ!」
ドッカーンッッ!
雲雀が華麗に避けたので代わりに綱吉の執務机が臨終した。
そして合図とばかりに各々ファイティングポーズをとる。
始まる乱闘という名の破壊活動。
もう、泣いてもいいだろうか。
そして結局綱吉は手袋をはめるのだ。