血桜鬼
□第1話
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朝8時ー
如月妃奈は遅刻しそうになっていた。
『ヤバいヤバい…近道しようっと!』
そう言って私はいつもは通らない神社に足を踏み入れた。
鳥居をくぐった途端、目の前が歪んだ。
『なっ何…?ち…こ…く…しちゃ…う…』
そこで意識が途切れた。
気がつくとある路地裏で寝ていた。
『……路地裏?私確かに神社で…』
周りを見渡すと神社ではなく、朝学校に向かってたはずなのに夜で、電柱もなく、街灯もない、古い町並みが広がっていた。
明かりは月の光だけ。
しかし、吸血鬼である私には夜目がきくので周りははっきり見える。
『なんか…江戸時代みたい…ん?』
路地裏にいて、姿は見えないが何か奇妙な声がした。
覗いてみると、白髪の赤い眼をした侍姿でだんだら模様の羽織を着た男達が、町のある男を襲っている。
男達は動かなくなった町男に群がり、血をすすり始めた。
『(ーっ!何あの人達!?まるで私と同じ吸血鬼みたい…でも理性が感じられない…この時代にレブナント?)』
レブナントは吸血鬼のなりそこないのこと。
私は後退りした時、音を立ててしまった。
白髪の男達は私に気付いてしまった。
『(まずい!どうしょう!銀のナイフ無いのに!) 』
慌てているうちに白髪の男が背後に迫った。
『(もうダメ!)』
そう思って身に刺さる痛みを想像したが、それは一向に来ない。
目を開けると、同じだんだら模様の羽織を着た人達が、白髪の男達を斬り伏せていた。
斬り伏せた人達は同じ羽織を着てはいるものの、姿は普通の人間。
見ていると、
「見ちゃったんだよね。殺しとかなきゃ。…ん?」
1人が私に近づいて驚いた顔をした。
何故なら、私は学校に行く途中だったのでセーラー服を着ていたからだった。
「変な着物だね?足も凄い出してるし…」
『(あ、そっか、こういう時代は足を出すのははしたないんだっけ?) 』
「目撃者です、副長。」
すると、今着物のことを言った人を押し退けて違う人が私の前に立つ。
月を背にして立つその姿は狂い咲く桜のように美しい男の人だった。
「逃げるな。逃げたら斬る。」
怖いことを言われたはずなのに、私は少しその男に見とれてしまった。
そして安心感からかその場で気を失ってしまった。
「おいっ!?」
「あーあ、土方さんが怖いこと言うから気絶しちゃったじゃん。」
「俺のせいかよ。しかし奇妙な着物だな。」
「どうしますか?」
「この時間にこの辺りうろついてる時点で何かしらあるんだろうが…屯所に連れて帰るぞ。」
目が覚めると、知らない天井が見えた。
すると、優しげなおじさんが部屋に入ってきた。
「おはよう。ごめんね。こんなことして。」
こんなこととは、私は手足を縛られたまま布団に寝かされていた。
「君に聞きたいことがあるから、ついて来てくれるかい。」
『はい…』
そう言って、おじさんは縄をほどいてくれた。
手の縄はほどいてくれなかったけど…
私は優しそうな男の人に連れられ、ある部屋に案内された。
そこには、男の人が8人居た。 >