血桜鬼
□閉話2
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慶応二年十二月ー…
『ふっ………はっ……ああっ……!!』
私は屋根の上で吸血衝動を抑えていた。
ちなみに今は子の刻。皆はもう寝ている。千鶴ももう寝ている。
久しぶり………禁門の変以来の吸血衝動に声を抑え、気配を消して、一人で耐え続けた。
30分かかって吸血衝動はおさまった。
部屋に戻ると
『あ、起こした?』
千鶴が寝ぼけナマコで聞いてきた。
「妃奈ちゃん……夜は危ないから駄目だ……よ。」
そう言うと千鶴はまた眠りについた。
私も好きで抜け出してる訳じゃないよ。
でもまだ、時期じゃないからー…
次の日、広間に幹部と私と千鶴が集まっていた。
内容は千鶴が知り合いの女の子から浪士達が島原で新選組屯所を襲撃する計画を立てているという話を聞いたという。
知り合いって誰だろ?
「俺達も胡散臭え連中が島原界隅をうろうろしてるらしいって情報はつかんでた。
ただ島原は場所の性質上、どうしても御用改めがしにくくてな。
………証拠もねえのに怪しい客を片っ端からふん捕まえる訳にもいかねえし。
どうしたもんか、対処に悩んでたとこだ。」
島原は捕り物ができないところだしね。
話は誰かが芸者に化けて島原に潜入するということになった。
「なるほど、しかし一体誰がそんな役目を請け負うんだ?
新選組には揚屋に潜入できる女性などーー」
「あの……私では駄目でしょうか?」
千鶴が意外にも立候補。まあ、皆の役に立ちたいっていう思いがあるんだろうけど。
「君が? しかし、嫁入り前の若い女性にそんなことをさせる訳にはーー」
「は、反対だよ、絶対反対! 島原の客って酔っぱらいばっかだぞ!何されるかわかんねえって。」
平助お前………思春期の中坊か?
仕方ない。千鶴を守るために人肌抜くか。
平助の背後に気配を消して回り、平助を壁に組敷いた。
平助や皆もびっくりしてる。当たり前だが。
『酔っぱらいを蹴散らす力があったら潜入できるの?』
「なっ………!? お、おい離せよ妃奈……、すげぇ力っ……!」
『私、一応力はあるよ? これでも力入れてない方だし。平助君力あるの?』
「なんだとーっ!?」
「まあまあ、二人共。いいんじゃない?
面白そうだし、芸者の格好したこの子達なんて想像つかないけどね。」
「千鶴、妃奈、お前らがそんな真似する必要なんざねえよ。万が一のことがあったらどうすんだ。」
『私がいれば平気だって。過保護だなぁ土方さん。』
「私………やります!島原には知り合いもいますし、危ないことにはならないと思うので……」
千鶴は早速知り合いに連絡を取った。
知り合いって誰だ?
そして千鶴が連絡を入れた翌日ー…
新選組幹部と私達は西本願寺に程近い料亭にいた。
目的は勿論ー…
「いらっしゃい、二人共!準備して待ってたわよ。」
「ご、ごめんね、無理を聞いてもらっちゃって。」
「何言ってるの。頼りにしてくれて凄く嬉しいわ。」
『千鶴の知り合いが千だったとはね。いつ知り合ったの?』
「ちょっと前にね。斎藤さんと一緒で浪士から助けてもらったの。」
『へぇ……』
部屋には私達と千と君菊さんの四人。
早速私達は着付けに取りかかった。
着物は現代でも見たことないような綺麗なものだった。
「早速着てみて!あなた達に似合いそうなのを二人で選んで来たんだから!」
「う、うん……」『分かった!』
二人で女物の着物に袖を通した。