血桜鬼

□第9話
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慶応三年十二月ー…
将軍職が廃止された後、徳川慶喜公は大坂に下った。
旧幕府軍も慶喜公に追従し、大坂には戦力が集結し始めた。




自分達は今、この国で何が起きているのか、私達の目線では察しきれない。
しかし、薩摩は何とか抑えなければならない。
薩摩の手から朝廷を取り戻し、慶喜公を新政府に迎えさせよう。
それが国のためだと新選組は信じて京に身を置いていた。




そんな矢先ー…




近藤さんが何者かに狙撃された。
撃たれた箇所は右肩だった。傷は深く、腕は動かせないとのこと。
二条城の帰りに馬上の近藤さんが狙撃された。
突如、馬上の近藤さんが狙撃されたとのこと。
しかし、撃たれた近藤さんは落馬しなかった。刺客に取り囲まれたが突破して奉行所に帰還したらしい。






『敵が間抜けだったのかな?』





私がそう呟いた時ー…






「………何の騒ぎ?」




『沖田さん?寝てなくていいんですか?』




「こんなに騒がれちゃいくら僕でも目が覚めます。……言うかその言葉、そっくりそのまま君と千鶴ちゃんに返したいなぁ。」




『え?』




「千鶴ちゃんも僕と同じ夜番だったのに走り回ってるし、君も昨日ずっと僕達羅刹を屋根から見張ってたよね?無理しないで寝なよ。」




『私は寝なくても身体に支障はきたさないから大丈夫です。千鶴は私が言っても聞かないから仕方ないんですよ。』




「それで?何が起きたんですか?」






沖田さんは私から視線を外し、土方さんに尋ねた。






「近藤さんが撃たれた。」




「ーーなっ!?」






土方さんの端的な言葉に沖田さんは目を見開いた。






「それで!? 傷は深いんですか!?」




「……浅くはねえよ。」






近藤さん大好きっ子だからこうなると思ったが、動揺し過ぎだよ。




ここが戦場だったらどうすんのさ。




井上さんが落ち着けと言うと沖田さんは心なしか身を引いた。
しかし、事のあらましを聞くと再び激高した。
土方さんに責めよる沖田さんを島田さんと井上さんがなだめるが、怒りの矛先は土方さんに向いたままだった。






「………もしも近藤さんが死んだら土方さんのせいですからね。」






沖田さんは土方さんに念押しして部屋を出ーーようとしたが、私を見て驚いた顔を少しした。
何故なら私は今眉間に皺を寄せて、汗だくになっていたから。






「妃奈ちゃん……君大丈夫?」




『っ………!!(吸血衝動だっ……!)』






近藤さんの血の香りが部屋に充満してたせいで引き起こしてしまったみたい。
私は沖田さんになんでもないと目線を送って、土方さんに気づかれないように沖田さんと部屋から出た。




彼に迷惑かけたくない。




私は自分の部屋に飛んで行くーーつもりだったが






『ーーえ?』






私は沖田さんに抱えられていた。






『お………きたさ……ん、何を……?』




「部屋に行けばいいんでしょ?あ、千鶴ちゃん!水持ってきて。」




「妃奈ちゃんっ!?分かりました!」




『あっ………、っぁあ……!』





沖田さんは何も言わずに私を部屋に連れて来てくれた。
それが今の私にはとてもありがたかった。




沖田さんが部屋に連れて来てくれると緊張の糸が解けて、銀髪に深紅の目が怪しく光り出す。






「君………それって………」




『………っ』




「えっちょ君っ!?」






私が小太刀を抜いたので沖田さんはびっくりした様子。




でも、頻繁に土方さんから血をもらう訳にはいかないので私はー…
小太刀を手の甲に突き刺して痛みで衝動を抑えこんでいる。




私はいつも通り、手の甲に小太刀をぶっ刺した。
いつもと違うのは沖田さんが目の前にいたくらいだ。






『っああ………! ふっふっー……、はぁはぁ……』




「君何やってんの………!?」






私は痛みでいつもの黒髪に深紅の目に戻った。




小太刀を手の甲から引き抜く。






「君、何やってんの?馬鹿じゃない?」






馬鹿って言われちゃった。当たり前か。自分で自分に刀刺したんだから。






『最近は小太刀で身体のどこかを傷つけないと衝動が収まらなくなっちゃってさ。
……ごめんね。もう大丈夫だから行っていいよ。』




「………自分を大事にしなよ。千鶴ちゃんその水僕が飲むから行くよ。」




「えっ、あの?」






沖田さん……自分を大事にって言うけど、私はあなたの方が心配なんですよ?
土方さんもですが……ね。




千鶴………沖田さんをお願いね。




私は手の甲の血を拭き取り、仕事にまた向かった。





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