血桜鬼

□第11話
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慶応四年三月ー…


私は江戸に戻り、現在の屯所である旗本屋敷で永倉さん達、土方さん達に合流した。
土方さんからは予想通り説教を食らった。


初めて負け戦を経験した近藤さんの落胆は私達の想像を超えるもので……
屯所に戻ってきてからも疲れた溜め息をひっきりなしにこぼすようになった。


幕軍の総代将たる慶喜公は朝廷からの追討令を受けて、上野の寛永寺で謹慎してしまっている。
朝廷も薩摩や長州の重鎮達の手で動かされるようになり、いよいよ佐幕側の劣勢が確実になり始めた。






『……本当に行ってしまわれるんですか?』






私達はある二人の見送りに出ている。


その二人は永倉さんと原田さん。


最近近藤さんと考えが合わなくなって亀裂ができているのは知っていたが、とうとう離隊してしまったのだ。






「ああ……俺は近藤さんや土方さんみてえに侍になりたかった訳じゃねえしな。
自分が選んだ訳でもねえ殿様に尽くすのは俺らしくねえし……
それに、あの時ああしてれば良かったなって後悔すんのは嫌なんだ。」


『……』






永倉さん……






「斎藤、お前はここにずっと残るつもりか?」


「俺にはここだ……まだ返すべきことがある。」


「そうか。」


「妃奈、ここにいない千鶴に伝えといてくれ。守ってやりたかったが途中で放り出すみてえですまねえってな。」


『原田さん……』






私の頭には二人と過ごした日々が繰り返される。


笑いあった日々……あの時間はもう戻らない。
私は知らないうちに目にいっぱい涙を溜めていた。






「そんな顔すんなよ。笑う門には『笑えません。こんな時に……』……こんな時こそだ。
大丈夫だ。お前のことはあの人が守ってくれる。」


『えっ……』






つい反射的に顔を上げた私を二人は笑った。
やられた……






「それに忘れんなよ。俺達はいつも同じ空の下、いつもどこかで一緒に戦ってるんだからな。」


「おう、薩長の連中と戦うのは変わらねえ! これが最後の別れじゃねえ! なっ!」


『……はい!』






そして二人は旗本屋敷から離れていくー…






『二人共お元気で!』


「妃奈もな!」


「じゃあな!」






こうして二人は新選組から離隊して行ったー…





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