血桜鬼

□第19話
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雪が舞い散る冬ーー


私は目を覚ました。今日はある高校に転入する初日だ。






『わっ、7時45分!? ヤバイヤバイ、お母さん何で起こしてくれなかったの〜!?』


「起こしたけど、熟睡してたし……最悪飛んだらいいでしょう?」


『見られたらどうすんのよ?』





私はお母さんが用意してくれた輸血パックをストローで吸いながら真新しいブレザーに身を包んだ。


輸血パックマズイ。土方さんの血が恋しいなぁ……


そんなこんなで血を飲み終えた私は玄関に直行。遅刻だもん。






『急げ急げ。』






私はわからないくらいに身体を浮かせて飛んで学校に急ぐ。
まぁ時速40qくらい?(自動車だって?気にしない気にしない。)


私はふと舞い散る雪に目を向けた。






『そういえば……あの人に会ったのも寒い冬だったな。』






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私は幕末の、土方さんを看取って意識が失ってから目が覚めたら自宅のベッドの上にいた。


どういうことだろうと近くに携帯があったので見ると、なんと幕末にトリップした日の朝だったのだ。


夢だったのだろうか。


そう思った時に足に何かが当たった。






『なんだろう?』






布団をめくるとそこには、幕末で私が腰に差していた四本の刀があった。






『夢じゃ、ない……』






そう呟いた後、私は泣いた。


あの人、土方さんに会えたこと、恋をしたことは全て現実だったんだって。


私は思った。


私はーーあの人に会う為に、あの人を重荷から救う為に、あの人に恋をする為に、きっとトリップしたんだろう。


そう思った。






『土方さん……』






私はそれ以来、暇があれば東京中、または近隣の県に土方さんを探しに出歩くようになった。


その時に今転入しようとしている学校を見つけた。
親に無理言って転入手続きを取ってもらったけど……


その学校の名は【薄桜学園】。


風間が土方さんにつけた【薄桜鬼】という名前に似てることが引っ掛かり、転入してみたくなった。


なんか風紀が厳しい学校らしい。
だったら遅刻ヤバイじゃん。


ーーと、現在に至る。






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未来に帰ってから5ヶ月。


ちなみに髪は元通りになっていた。短いのも好きだけどやっぱり長いのがいいよね。


そして刀はあれ以来ずっと手入れを欠かさずにして、外出の際は必ず持ち歩いている。
銃刀法はきちんと警察に申請済みだから大丈夫。


しかし私は足を止めた。


空を見上げる。






『ふと周りを見たら人斬りが起きていた時代が懐かしいなぁ。
平和すぎるな、この時代。』






武士は必要なくなった時代。


この時代に彼らはいるのだろうか。


千鶴……みんな……土方さん……


会いたい。


そう思って目を閉じた時、肩に衝撃があった。誰かがぶつかったようだ。






「悪ぃ、急いでて……」


『いえ、大丈夫で…す…?』






そこには懐かしい顔があった。





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