血桜鬼

□閉話2
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そろそろ暮れ六つ半ー…
角屋の座敷には団体のお客さんが多数詰めかけている様子だった。




千鶴と私は自室を出た。




廊下には宴会を開いているお客さんの話し声が聞こえる。






「……しかしこの角屋には新選組の幹部共も頻繁に訪れると聞きますが。
祇園の方に出掛けた方が良かったのでは?」




「知ったことか。時流を読めぬ幕府の犬等、恐るるに足らん。
奴らなはいずれ目に物を見せてくれるわ。」






新選組に敵意を持ってるってことは尊攘派の浪士かな?




千鶴は報告した方がいいということで、角屋に待機している斎藤さんと山崎さんに報告しに行った。




私は屯所にいる隊士達に文を書くことにした。




誰に書くか悩んだが、こういう時は土方さんだろうと思い、土方さんに手紙を書いた。




屯所に手紙を送って私はまた新たに情報を探るために部屋を出た。




ある部屋を通りすぎると、聞き覚えのある声が……






「……やはり俺の目に狂いはなかったか。その姿我が妻に相応しい。ますます、お前を手に入れたくなった。」




「わ、私はあなたの妻じゃありません!そんなこと勝手に決めないでください……!」




「この俺が褒めてやっているのだぞ。光栄に思え。
……やはりお前は女らしい格好している方がいい。」




「い、いやっ……!」






この声は風間さん!?千鶴が危ない!






私は襖をすぐさま開き、持ってた扇子で風間さんの頭を叩いた。




スパーン!!






「っ………!?」




「あ…妃奈ちゃん!?」




『千鶴、早く逃げて!逃げたら斎藤さんのところに行きな!』



「う、うん……!」






千鶴が行ったのを確認すると風間さんの方に向き直る。






「妃奈……貴様〜!」




『何でしょう?』




「………!ちっ。」






舌打ちしただろこの野郎






『じゃあ私所用があるから、失礼します。』




「待て。」






ああ、やっぱり素直に解放してはくれないか。






『何。』




「この俺を無下にしたのだぞ。酌くらいせぬか。」




『そんな暇ないし……』




「どうせ、お前らは浪士の動きを探るためにそのような格好をしているのだろう。」






あ、バレバレか。






『でも、情報は掴めたから土方さんに報告しに行くの。邪魔しないで。』




「さっきこの俺を殴った償いをせねば解放できんな。」






この我が儘王子




もう解放してくれるならなんだってしてやる!




私は風間さんの襟首を掴み、唇を重ねた。




風間さんは一瞬驚いた顔をしていたが、状況が分かると受け入れてくれた。






『これで満足?頭領様?』




「物足りん気がするが、まぁいい。」






物足りんって……!この野郎



私のファーストキス返せ!






『文句言うな!じゃあ行く………!?』






私が背中を向けると風間さんが抱きついてきた。






『ちょ、離して!』




「ふ……」






首筋に鈍い痛みがしたと思うと風間さんは身を離した。






「今宵は楽しませてもらった。行け。」




『………?じゃあね。』






私は角屋の玄関に出た。するとそこには土方さんがちょうど来ていた。






『土方さん!』




「妃奈……か?」




『他に誰がいるんですか?案の定、浪士達が会合を開いていて内容は屯所を襲撃するだの物騒なことばかりでした。』




「あ、ああ……悪ぃ。そんな格好してんのに喋りはいつものお前のままだから調子狂っちまってよ。」




『廓言葉で喋った方がいいですか?』




「いや、そのままでいい……。話が反れたな。それだけ分かりゃ充分だ。
屯所に戻って隊士共を連れてくるぞ。久々の大捕物だ。」




『了解!』






土方さんと共に歩き出そうとするけどー…






『わっ……!』






履き慣れない高下駄で転びそうになる。






「危ねぇっ……!」






土方さんが咄嗟に支えてくれたおかげで派手に転ばず済んだ。



飛べたらいいんだけど、土方さんの手前、走らないといけない。それが仇になってしまった。






「おい、大丈夫か?手に掴まれ。……慣れねぇもん履くからだよ。」




『でも、これ以外無くて……それに脱いで走ってたら余計目立ちますし……』




「そうだな……。ほら。」




『え?』




「また転ばれちゃたまんねえからな。手握ってたら安心だろ。」




『………ありがとうございます。』






飛んだ方が早いんだけどな。仕方ない。




土方さんと共に大門を出ようとした時ーー



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