血桜鬼

□第8話
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その後、広間にて会議が行われた。
議題は坂本龍馬について。
大政奉還を主導し、薩摩や長州と繋がりも深い土佐藩の浪人。らしい。(日本史苦手)




一時期は所司代や見廻り組、新選組でも血眼になって探していた。
しかし、先日の大政奉還を機会に手を出すなと命が下りていた。
まぁ、その辺りよく分からないけど重要人物だったらしい。未来でもとても有名だしね。




井上さんの口から改めてその名が聞かされた。






「ーーその坂本龍馬だが……暗殺されたらしい。」




「マジかよ源さん。………一体誰がやったのか話は出てるのか。」




「知っての通り、政治的な判断もあるし私達は近藤さんから坂本龍馬に手を出さないよう下命されている。
だけど世間はそう見てくれないようでね。
………現場に新選組隊士の鞘が落ちていたらしい。今、取り調べの問い合わせがきているよ。」




『鞘って証拠になるの?鞘なんてどれも似たような物じゃんか。』




「どう考えても単なる言いがかりだろうよ。………で、誰の鞘だって言ってるんだ?」




「………それがなぁ。あんたなんだ、原田君。」




「えっ!?」






千鶴は驚きで声を上げていたが、私は呆気にとられていた。




いやいや、原田さんはそんなのしないでしょ?
しかも、原田さんの鞘はきちんと腰についてる。
まぁ、この話自体皆知らなかったんだから皆は犯人じゃないけど。




話は山南さんの話に……






「山南さんは大丈夫なのか?俺らから見ても最近の夜の巡察はやり方がひでえぜ……」






確かにあの人は血に飢えてるかのような行動や目をしている。
しかし、羅刹隊の存在は公には出来ないから気を付けるしかない。
私は最近夜中、羅刹隊の巡察を空から見張っている。
妙なことをしたりしたら介入するために。独断だけど。
昨日は女の子を守って背中を斬られたし。(誰にも見つからなかったけど)






「……その件についてだが。」




『近藤さん、土方さん………って。』






私はあまりびっくりしなかったが、千鶴や周りの皆はかなりびっくりしていた。




斎藤さんが広間に入ってきたからだ。




そっか、今日から復帰するんだ。






『間者としての任務お疲れ様。』




「ああ………」




「妃奈、てめえ何で知ってる?」




『土方さん眉間に皺が残るよ?ちょっと盗み聞きしてたんですよ。すみませんでした。』




「………ったく。」






皆安心してる中、斎藤さんは深刻な顔で口を開いた。






「この半年、俺は御陵衛士として活動したが、伊東達は新選組に対して明らかな敵対行動を取ろうとしている。」




「………伊東の奴は幕府を失墜させるために羅刹隊の存在を公表しようとしてやがんだ。
………そのために薩摩と手を組んだって話もあるな。」






羅刹隊なんて存在が公表されたら幕府の信用もがた落ちだし、新選組もただじゃおかない。






「そして、より差し迫った問題がもう一つ。伊東派は新選組局長暗殺計画を練っている。」



「局長………こ、近藤さんを………!?」






千鶴はそんなって顔してるけど、近藤さんは押し黙ったままで、土方さんの話を聞いてくれと言う感じだ。






「御陵衛士は既に新選組潰しに動き始めてる。………坂本龍馬が暗殺された件は聞いたか?」




「あー…なんでも俺がやったとか言う話だよなぁ。」




「聞いたなら話は早え………。その噂を流したのは御陵衛士の連中だ。
紀州藩の三浦休太郎が新選組に依頼して原田に殺させたってな。」






実際三浦さんは覚えがないらしいが、噂を信じた輩に襲撃されるかもしれないらしい。
噂は怖いからな。




ちなみに三浦さんの警護は斎藤さんがやるらしい。理由は周りから見たら伊東派から出戻りしたようにしか見えないかららしい。




斎藤さんはほとぼりが冷めるまでは新選組にはいないらしい。




そして土方さんの言葉を皆待つ。






「伊東甲子太郎……。
………羅刹隊を公にするだけでなく、近藤さんの命まで狙ってるときた。
残念なことだが、伊東さんには死んでもらうしかないな。」



「う……む……。止むを得まい……」






副長が提案し、局長も承諾。それは新選組の総力で伊東さんを殺すということを示した。
私はあのオカマがいなくなるんだと思うとせいせいした。




土方さんはまず、伊東さんを別宅に呼び出し、近藤さんと接待にあたる。
その後、伊東さんの死体を使って御陵衛士の連中を呼び出して斬るという。
実行は永倉さんと原田さんを指名した。
人を殺すには整然とした会話だ。
千鶴は呆然としていた。




しかし、私は一つ千鶴も気になるであろう内容を口にする。






『土方さん。御陵衛士の平助君は……どうするんですか?斬るんですか?』




「妃奈ちゃん!?………斬るな……んて冗談ですよね、土方さん?」




「………刃向かうようなら斬れ。」




『成る程。』






しかし、千鶴は土方さんの本心が読み取れないからか、抗議する。






「斬れって………平助君を斬れってことですか!?平助君がどうなったっていいってーー」




「そんな訳がなかろう!!」






近藤さんが声を荒げる。






「………トシだって、本心では助けたいと思ってるんだ。………トシには俺からも後で話しておく。」




「すみませんでした……取り乱して……」




『そんなことないよ。平助君が皆に慕われている証拠だよ。』






そして、近藤さんは局長としてじゃなく、近藤勇として永倉さんと原田さんに平助君を見逃すように頼んだ。




そして私は皆に指示が行き渡る中、発言をする。






『近藤さん。千鶴を平助君の説得に向かわせてください。』




「今回は指令でも使いでもない汚い仕事だ。お前らがやる必要はねえよ。」




『分かってますよ。気楽に手伝える仕事じゃないって。でも、平助君を新選組に戻すなら今しかない。
汚い仕事の時だけ目を背けるのは卑怯者ですよ。
私達だって新選組の一員です。』




「妃奈ちゃんの言う通りです。何か手伝わせてください。」






「………決意は固いようだな。ならばどうする?………この一件において君達は何をしたいのか。」




「私は平助君を説得したいです。」




『私は屯所警備。』




「「「え?」」」






私がそう言うと皆間抜けな声を出した。






『何よ?』




「妃奈ちゃん………平助君の説得に行くんじゃないの?だから私と皆を説得したのかと思ったのに………」




「俺らも……」




『永倉さんと原田さんまで失礼な。私は気になることがあるから残るんですよ。』




「気になること?」




『私情だからお気になさらず。千鶴は平助君の説得、頑張っておいでよ。』




「う、うん!」






そして皆出払う。




私は屯所警備で辺りに意識を張り巡らせたー…




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