血桜鬼

□第18話
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【あなたのことは認めていましたよ…】






最後まで新選組の為に行動してくれていた山南さん。






【笑ってくれよ、いつもみてえに……】






最後まで笑顔を絶やさなかった平助君。







【会津に残って俺が、誠の旗を掲げることを許可してください。】






自分の志を貫いた斎藤さん。






【君の生きる時代でまた会おう。】






近藤さんを敬愛していて、今は千鶴を愛している沖田さん。






【俺は近藤さんや土方さんみてえに侍になりたかった訳じゃねえからさ。】






自分らしく、道を進んだ永倉さん。






【そんな顔すんな。大丈夫だ、お前のことはあの人が守ってくれる。】






いつも優しかった原田さん。






【何してるんですか、副長……。あなたは頭だ、俺たちは手足の筈でしょう……?】






新選組の為に、土方さんをいつも敬って真面目に働いていた山崎さん。






【しがない連中で悪いねえ。】






お父さんみたいに朗らかだった井上さん。


みんなみんな大好きだった。そしてー…






【私は妃奈ちゃんのこと一番の親友だって思ってる!】





いつも優しく時に厳しく、気丈だった千鶴。


彼女も大好きだった。また会いたい……






ーーーーーーーーーー






私はそんなことを思い出しながら、土方さんを膝の上に寝かせていた。






『土方さん……』






土方さんの頬に落ちた自分の涙を拭う。


すると土方さんが微かに目を開いた。






『土方さん!』


「妃奈……」






私は顔を近付けた。土方さんは手で私の頬を包み込む。






「俺は……もうじき寿命が尽きるだろう。」






そう言った土方さんの足先は既に灰になりかけていた。


もう寿命が尽きそうなのだろう。






「俺は……必ず先の時代でお前に会いに行く。」


『未来で……?』


「ああ。未来でお前を必ず見つけて……今度こそ幸せになろう。」


『……っ!』






未来で。


また会えるかはわからない。でも土方さんが言うなら会える気がする。


土方さんは小指を差し出してきた。
彼は優しい表情をしていた。






『土方さん……』


「約束だ妃奈、また会うと。鬼は約束を守るもの、なんだろう?」






私は涙が止まらなかった。でも、大好きな愛してる人の前では笑顔でありたい。


私はブラウスでできる限り涙を拭って彼に屈託のない笑顔を向けて小指を差し出した。






『はいっ……! 破ったら承知しませんからね?』


「ああ……、肝に命じておく。」






私達は指切りげんまんをした。子供っぽいけど大切な約束。


私達は必ずこの約束を守ってみせる。


指切った後、土方さんは私を近付けた。






「妃奈……愛してる。」


『っ……私も土方さんを愛しています。』






私達は桜の下で涙の味がする口付けを交わした。


それを合図に土方さんは灰になった。






『土方さんっ……!』






たった今まで土方さんだった灰を握りしめる。


ふと手を見ると、身体が薄くなってるのに気付いた。






『時間、か……』






土方さん、待ってて。今帰ります。


そして私を見つけてー…


私の意識はそこで途切れた。






ーーーーーー五稜郭の裏手の桜の下には灰とある男の遺体だけが残っていた……


私は未来に帰っていった……




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