血桜鬼
□第19話
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一房の北風が舞った。
『ひ……じ…か…たさん?』
「妃奈……?」
そこにいたのは、好きで愛しい大切な人。
『土方さん!!』
「妃奈っ……!」
私が胸に飛び込むと土方さんは力強く私を抱きしめてくれた。
ちょっと苦しい……;
『土方さん……苦しい……』
「あっ、悪い!」
すると力を緩めてくれた。助かった……
『……約束、守れましたね。』
「ああ……守れたな。」
住宅街の道だということも忘れて私達は再会の口付けを交わした。
しかし土方さんはすぐ我に返った。
「……住宅街だったな。」
『あ……』
私達はお互い赤い顔をして走り出した。
「ところでお前のその制服は……? 昔会った(幕末時)に見た制服は【桜花女学園】の制服だった筈だが……」
『よく覚えてましたね……実は転入することになりまして。
【薄桜学園】って高校に。土方さん知ってます?』
「……いや……」
土方さん知らないかぁ……
薄桜学園に近付くとなんか騒がしい三人組が見えた。
「もう平助君! また昨日夜更かししてたの? 早く寝ないと身体に良くないよ?」
「だってセーブポイントが見つかんなくってさ!」
「おはよう平助、千鶴ちゃん。」
『……!』
あの人達は……
まさか。
私は土方さんを見た。土方さんは優しい顔をして頷いた。
「薄桜学園は言わばこの時代の新選組の生まれ変わりのたまり場だ。
そしてあいつらは薄桜学園の生徒。俺は教師をしている。」
『ほっ本当ですか!?』
驚愕のあまり私は転けそうになった。
そこを土方さんが支えてくれた。
「大丈夫か?」
『すみません……走るのめんどくさい! 土方さん飛びましょう!』
「…………は?」
『手離したらまっ逆さまですからしっかり握っててくださいよ!』
「ちょ、おい、待てっ……うわぁっ!?」
私達は身体を浮かせて空中を移動する。
手を繋いだら一人くらい一緒に飛べるんだよね♪
土方さんはなんとか慣れてきたようだ。
「……お前と一緒に空飛ぶのもいいもんだな。」
『人外の彼女を持つ特権ですよ。』
「やれやれ。近くで下ろせよ。」
『はーい♪』
学園近くの路地裏に土方さんを下ろした。
チャイムまで後10分。
『間に合いましたね。行きましょ、土方さん!』
「……ああ。それと学校では先生ってつけろよ。」
『あ、そっか。わかりました、土方先生。』
「なんか自分で言っといて変な感じだな。」
私達は校門に近付く。校門にはこれはまた懐かしい面子。
『斎藤さんに薫!?』
「妃奈?」
「如月か?」
……まさか幹部全員いる? ちなみに鬼も?
風間は会いたくないなぁ……鬱陶しいから。
簡単な挨拶をして職員室に行くと案の定、競馬を聞いてる永倉さんとそれを呆れた目で見てる原田さんがいた。
『みんな……』
「妃奈、よ。」
「くっそぉ負けたぁ!……って妃奈ちゃん!?」
「新八、学校で競馬中継聞いてんじゃねえ!」
うわぁ懐かしい。思わず涙ぐんでしまった。