血桜鬼

□第19話
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「で、なんだったんですか土方さん?」


「教えてください!」


「教えられるかあぁああああっ!!」






土方さんは逆ギレしました。
まぁ内容が内容……だからねえ。


その後、なんとか丸め込み……帰り道。






「……本当になれるのか?」


『さっき耳打ちしたじゃないですか。』


「お前な……【人間に抱かれたらなれる】とか、少女漫画の見すぎじゃねぇかっ!」






そう方法は【人間に抱かれる】だ。


冗談ではなくてマジな話。
つまり土方さんに抱かれるという訳だ。






「聞きたいが、お前は今にでも人間になりたいのか?」


『……本音言えばもう少しだけ、吸血鬼でいたいです。我が儘かもしれませんが。』


「我が儘じゃねえよ。」






土方さんは優しい顔で私の頭を撫でた。






『あっ、でも土方さんがおじいさんにならないように気を付ける。』


「それは頼むわ。」






おじいさんになったら抱くも何もできなくなっちゃうからね。






『まぁ、吸血鬼で血を吸うのも嫌気差してたし、寿命違うからみんな先に居なくなるから寂しいし……』


「そうだよな……寿命って吸血鬼はどんくらいだ?」


『まぁ千年は軽く生きますね。17くらいから身体の成長は止まるので、このまま千年でしょうか。』


「人間からしたら果てしない時間だな。」






人間には羨ましい存在。だけど実際は人間が一番羨ましい。






『でも限りある命を精一杯生きるから、人間は美しいです。』


「……そうだな。」






そう言うと土方さんは私に触れるだけのキスをした。






『土方さん?』


「吸血鬼より人間の方がいいに決まってる。人間は平気で嘘ついたりするずる賢い面もあるが……
散り際は美しいもんだ。」


『……そうですよね。吸血鬼はいいことより都合悪いことの方が多いですし。』






太陽とか吸血衝動とか。


吸血鬼も楽ではない。






「俺はそんなお前の闇を取り除く為にあの時代、お前に……妃奈に会ったんだ。」


『私は貴方に恋をする為に、貴方を愛する為にトリップして、土方さんに会ったんです……』


「必然、だったんだな……俺達の出会いは。」


『土方さん……』






土方さんは私を宝物を扱うように優しく抱きしめた。


私を大切に思ってくれてるんだって、身体全体で感じられて凄い幸せで……思わず涙が出そうになる。






「妃奈……好きだ。もう離さねえから覚悟しとけよ。」


『はい!』






土方さんは私に優しく触れるだけのキスをした。幸せでずっとずっとこうしていたい……


土方さんは一息離すと今度は外にも関わらず、深く舌を絡めてきた。






『んっ……』


「……ハァ……」






目を開けると土方さんの紫の瞳と夕焼けよりも紅い私の瞳がかち合う。


私達はお互い笑った。幸せで。






「いつか近いうちにお前をもらっていくからな。覚悟しとけよ。」


『っ……!』


「妃奈、愛してる。」


『私も貴方を、土方さんを愛しています。』






咲き誇ろんで綺麗で。


私達の心に咲く、永久に輝き続ける愛の花。


その花の名はーー






必然の薄桜






end.




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