曼珠沙華の花束を貴方に
□第七話、奈落の底の一枚目
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振り返ったそのジュニアたちの『パパ』は、大きくなったジュニアそのもの。
精悍な顔立ちをしていた。
しかし不意に、無表情だったその顔が呆然とした顔に変わった。
「リコリス……あぁ、リコリスじゃないか……」
ふらふらと低空飛行で彼は私に近づいてくる。
足元の彼岸花が小さく揺れた。
「あのとき わたしはお前に、探しに来るなと言ったはずだ……
しかしなぜリコリスが地獄に……
いや……そんなことどうでもいい。
……ずっと、会いたかった」
無機質な彼の目は薄っすらと濡れているように見えた。
そして、彼は私を抱きしめた。
「……えと、なんで私の名前を?」
申し訳ないが私には彼の記憶はない。
けど彼の全身からは情愛や懐古の念をひしひしと感じた。
引き離すことは、私にはできなかった。
「……わたしだよ、セルだ。
まさか……覚えていないのか?」
私の両肩を掴んで離しセルさんは言う。
その瞳は動揺の色を見せていた。
嘘を言っているような目じゃない。
……おそらく彼は、私の記憶と深く関係してる。
「……ごめんなさい」
最初のセルさんの切羽詰まったような言葉が離れない。
『ずっと、会いたかった』
彼はそう言っていた。
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