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□雨に忍んで
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雨は嫌いだ。
いつも賑やかな外界の音を全部飲み込んでしまう。
静かな空間にただ時計の音だけが響いて、時間だけが過ぎていくような気がする。
雨に忍んで
雨粒が窓を伝う。
くっついてひとつになる。
速度を増して、落ちてった。
「よほど雨がお好きなんですねぇ、***さん」
ぼーっと雨粒を眺めてたら、突然声をかけられた。
隣には、フリーザ様。
「なっ……え……え!?」
ここは彼の基地とは程遠い、私の家だ。
それに、お供もつけずに雨の中ひとりでこんなところに来るなんて……
なにか重大なお話でも……?
「驚かせてしまいましたか、すみませんね」
フリーザ様は特に悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに笑っていた。
まるでドッキリ大成功、とでも言いたげに。
「あ!そ、そうだ。お茶出しますっ」
せっかく上司、というかボスが突然とはいえ来てくれたのに、ぼさっとしてるなんて。私の馬鹿。
「かまいませんよ、すぐに帰ります」
「へ……?」
再び呆ける私を見たあと、フリーザ様は窓の外に目をやった。
「雨は嫌いなのであまり出かけたくはないのですが……音を吸い込んでしまうので」
つう、と落ちていく雨をなぞって。
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