short

□雨に忍んで
1ページ/2ページ


雨は嫌いだ。

いつも賑やかな外界の音を全部飲み込んでしまう。
静かな空間にただ時計の音だけが響いて、時間だけが過ぎていくような気がする。


雨に忍んで



雨粒が窓を伝う。
くっついてひとつになる。
速度を増して、落ちてった。

「よほど雨がお好きなんですねぇ、***さん」

ぼーっと雨粒を眺めてたら、突然声をかけられた。
隣には、フリーザ様。

「なっ……え……え!?」

ここは彼の基地とは程遠い、私の家だ。
それに、お供もつけずに雨の中ひとりでこんなところに来るなんて……
なにか重大なお話でも……?

「驚かせてしまいましたか、すみませんね」

フリーザ様は特に悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに笑っていた。
まるでドッキリ大成功、とでも言いたげに。

「あ!そ、そうだ。お茶出しますっ」

せっかく上司、というかボスが突然とはいえ来てくれたのに、ぼさっとしてるなんて。私の馬鹿。

「かまいませんよ、すぐに帰ります」

「へ……?」

再び呆ける私を見たあと、フリーザ様は窓の外に目をやった。

「雨は嫌いなのであまり出かけたくはないのですが……音を吸い込んでしまうので」

つう、と落ちていく雨をなぞって。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ