main(short love story)

□二人の約束
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時刻は夜中の1時半。

病院での勤務を終え、車から降りたローは、早急な仕草で自宅マンションへ向かう。

ポケットの鍵を手繰り寄せながら、左手で腕時計を確認する。


「すっかり遅くなっちまったな…」



玄関を開ければ、リビングの明かりが着いているのがわかる。

「ーーーーマナ、起きてたのか?」


ローに背を向けた状態でソファに寄りかかる彼女の顔を除き込むように周ると、気持ち良さそうにブランケットに包まりながら目を閉じるマナの姿が。


「ったく、そんな姿じゃ風邪ひくっつーの」

同棲を始めてから日課となっている夕方の電話では、遅くなるから先にベッドに入っているように伝えた筈だったが、マナは「はぁい」と柔らかく答えて、いつもソファで待っている。


ローはマナの正面にそっと腰を下ろして、彼女の頬に手を沿える。



マナも日中は、昼食を摂るヒマもないほど忙しく、仕事をこなすキャリアウーマンである。



それでも、毎朝5時すぎに起きてヨガをして、2人分の朝食を作り、家事をこなしながらいつも笑顔を絶やさない彼女。



「すげーな」


一言つぶやきながら、親指でマナの睫毛をなぞる。





一度マナから離れて着替えを済ませたローは、再びソファに近づいてマナを抱き上げる。


季節は9月の終わり。薄手のスリップ1枚に、ブランケットをかけただけの彼女をそのままにしたら、風邪をひいてしまう。


ダブルサイズのベッドに彼女をそっと降ろし、自分もベッドに腰を降ろす。



「うふふ…」

何やら幸せそうな夢を見ているのだろうか。目を閉じながら小さく笑うマナ。


「…楽しそうだな」

頬をなでながら、自然とローの口元が緩む。

明日は土曜日で病院も休み。
目覚ましをセットせずに二人で昼まで寝てしまおう。

ローも疲れた体を休める為にベッドに潜り込む。



「あ」



何かを思い出したローは、マナの上に多い被さり、優しく髪を撫でながら、額、瞼、頬、最後に唇にキスを落とす。



《お互い忙しくてすれ違いなのは仕方ない。だけど、ベッドに入る時は私が寝ていても、キスしてね》



高いジュエリーやバッグも欲しがらないマナが、同棲生活を始める時に唯一欲しがったのはこの《約束》だった。



窓から刺す月の光は、彼女の顔を優しく包み込む。

ローは普段あまり言わない言葉を囁く。



「…愛してるよ、マナ」





すれ違う生活の二人を繋ぐ、2人の約束。

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