main(short love story)
□下着に厳しい恋人(✳︎)
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午前10時。
ローの恋人、マナはメイクと着替えを終えて、リビングで待つ彼に声をかける。
「ロー、お待たせ!」
今日は中々休みが合わないローとの、久しぶりの映画デート。
マナが選んだのは下ろしたての『ロビン•シック』の冬の新作のリブニットとホワイトパンツだった。
ロビンと何度もサンプルの試着を重ねて作った、自信作である。
ローはソファに座りながらチラリと首だけこっちを見て、
「その場で一度回ってみろ」
と言う。
「え?こう?」
くるん。
再びローを見つめれば眉間にシワが寄っている。あれ、今日の服は起きに召さなかったかしら。
「…俺の女なら下着にも気を使え。他のに着替えてこい」
「えぇ?」
何それ、と思いながら今日つけた下着を襟ぐりから覗いてチェックしてみる。
これは先週買ったばかりのモノで胸のラインも美しく見えるタイプなのだが、何が気に入らないのか。
「これ、ヴィクトリアズシークレットのだよ。最近買ったばっかりだし、形も綺麗だし、色もローが好きな黒なんだけど」
「そういう話じゃねーよ。白いボトム履くならラインに響くような下着は止めろ」
出た。ローの異常な警戒心。
というかヤキモチ。
同棲生活をしている中で、私が何処かに出かける前には必ずファッションチェックをするロー。
少し胸が開いたニットや襟抜きシャツを着た時は「屈んだ時に下着が見える。もう一枚着るか隠せ」、今日みたいに白いボトムやタイトスカートを履けば「それを諦めるか下着を替えるかどちらかにしろ」とまるで小姑のように厳しくチェックしてくる。
はぁ、とため息をつきながらマナは言う。
「あのさ、大丈夫だよ。ローはいつも厳しくチェックするけどさ、周りはそこまで他人の事ジロジロ見ないよ」
だがローは表情を緩めない。
「ほら。上映時間まで1時間切ってるぞ。直すまで車出さねぇからな」
結局、ローの有無を言わさぬ態度に折れたマナは下着を替えることにした。
寝室で自分の下着姿を鏡に映す。
繊細な黒のレースはマナの白い素肌によく映える。
納得がいかないまま下だけタンガタイプの下着に履き替える。
(ローも気に入ってくれると思って選んだのにな。せっかくのデートなのに、上下チグハグの下着じゃあカッコつかないじゃない)
下着も、ロビン•シックの新作も今日のデートまで降ろさずにいたのに、と思いながらつい愚痴がこぼれる。
「ったくもー、ローのバカ!」
一度脱いだ白いボトムを手に取った瞬間、
「医者にバカ呼ばわりかよ」
とローの声。
振り向けば寝室のドアに寄りかかりながら、マナの着替えをチェックしていたらしい。
「ロー!」
素早くシーツを手繰り寄せて、ローを見れば、意地悪く唇の端を上げている。
「気が変わった」
「えっ。ちょっ、ロー…」
気づけば視界は反転していて頭の両脇はローの腕で挟まれていた。
「俺に悪態をつくなんて、いい度胸じゃねぇか」
「違うの、せっかくのおニューのセットなのにローが」
「うるさい。じっくり調教するからな、覚悟しろ」
まだ言い終わらないうちに言葉を遮られ、次の瞬間唇を塞がれた。
「んっ、はぁ…、ろぉ……」
あ、もうダメだ。
こうなったらローは最後まで止まらない。
いつも情事の始めに与えられるこの深いキスは、まるで麻薬のようにマナの思考を停止させる。
「ね、ろぉ、…っっ」
酸欠状態になり、ローの胸を叩いて苦しいサインを伝える。
「…マナ」
リップ音を立てて唇が離れる。
これだけで目がうるんで子宮の奥が疼いてしまうのは、ローのせい。
体を重ねる度に敏感に反応する自分の身体に、自分の心が追いつかない。
「スイッチ入った、な」
唇に入るのはローの長い指。
「ふぅ…っ」
楽しそうに見下ろすローのその態度が、自分自身の羞恥心を激しく煽る。
「さて、」
「やっ、ロー!待って…」
力強い男の力に叶う筈がなく、マナはなすがまま。四つん這いの格好をさせられた。自分の下半身がローの正面に来る体制だ。
「嫌!朝からこんな恥ずかしい格好…」
朝日が差し込む寝室はマナの全てが嫌でも見える。
「言ったろ、調教って。俺の言うことを素直に聞かないお前が悪い」
「あっ」
タンガの腰の辺りをグッと引き上げられる。
クロッチの部分が秘部に食い込み、マナは恥ずかしさでギュッと目を閉じた。
「嫌って言う割りに、ココは、すげー溢れてるけど…?」
ローの低い声に、全身に鳥肌が立つほど感じる。
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