main(short love story)
□噛み癖(✳︎)
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深夜2時。
世の中がシンと静まり返る頃。
キングサイズのベッドの軋む音が部屋中に響く。
「っ、はぁ、ローッ…」
「マナ、逃げるな」
ーーーーーもうダメ、何も考えられない。
マナはローの上に乗ったまま、下から激しく突き上げられる。最初から激しい恋人の律動に思わず腰が逃げてしまうところを、大きな手で強引に抑えつけられる。
「あっ、あっ、やぁあ…っ」
「ほら、もっといい声で鳴け」
ローの舌がねっとりと乳首の先に絡み、もう片方は強く彼の指先で摘まれる。
「っ、痛いよぉ…ローッ」
「それが、感じるんだろ?…さっきより、ココ、締まってる」
「…言わないでっ…!」
深く感じ入りながらも、数十分前の自分を激しく後悔しているマナだった。
仕事帰りにたまたま遭遇した元カレ。ほんの数分、近況報告し合って別れたのが、今日の夕方。
付き合っていたと言っても三年も前の話で、付き合いも2ヶ月でほとんど深い思い出らしいものもない。
家に着く頃には元カレの事などすっかり忘れていたマナだったが、先に帰宅していたローに荷物と携帯を預けて、台所に直行したのがまずかった。
「お夕飯、お肉とお魚どっちがいい?」
と振り返ってみれば、そこには不機嫌極まりないローの顔。
「おい、なんだよコレ」
「え」
画面に表示されるのはFacebookのメッセージ。
よくよく見れば、【今日は会えて嬉しかったを今度ご飯でも…】という文章に男の名前が表示されている。
中身を開かずとも通知で内容が分かる今のスマホは、便利でもある半面、危険でもある。
やましい事など何一つないマナは、全部をローに読ませて、今日の出来事を正直に伝え、一緒に食事にも行かないと伝えた。
しかし、ローの怒りは収まることなく、気が付いたらベッドまで連行されて今に至るのである。
ローとの行為で噛まれる事はよくあるけど、今回はいつもより痛い。
それなのに、ローの言う通りに反応してしまう自分の身体が憎い
。
付き合って何度も肌を重ねるうちに、ローの手によって敏感で感じやすい身体に仕上げられてしまった。
先程まで舌先で転がされていた乳首を思い切り吸われて、一度目の絶頂を迎えてしまう。
「あぁぁーーーーっ」
律動が止まると同時に、ローの割れ腹筋に手をついて、必死に痙攣する身体を支える。
(ーーーーあぁ、今の私は涙に濡れてグチャグチャだろう。)
溢れる涙を拭う余裕もないまま、ローを見つめる。
どちらかといえば気が強いマナは、日常生活ではローと口喧嘩も割とよくする。
年収だって同じくらいだし、ローにおんぶにだっこな生活ではなく、一人の自立した大人同士として対等に生活している。
だが、ローとの情事の時だけは違う。
マナがどんなに気を張っていようとも、絶対的に主導権を握るのはロー。
「ふ、噛まれてイッたのか?」
「ふぇ…っ、はい…」
ひっく、ひっくとすすり泣くマナの頬に手を添えるローは、手つきこそ優しいものの、意地悪い笑みで見上げている。
「俺の許可もなく?」
「ごめんなさい…っ」
身体こそ上に乗っているが、完全にローに服従するマナは、まるでご主人様に縋り付くような気持ちでいっぱいだった。
「お願い、許して…」
「…」
「っぁ、ん」
そうお願いすると、それまで深く挿れられていたローのものが引き抜かれる。
いきなりなくなった刺激に困惑していると、ローの腕が伸びて自分の体が、ベッドに沈む。
ちょうど先程と逆の体制だ。
「許して欲しかったら、ちゃんとこの口でおねだりしてみろ」
親指でゆっくり唇の形をなぞられる。もう、ローにそっとなでられるあだけで身体が反応してしまう。
この切なくて、恥ずかしくて、苦しくて、でもたまらなく欲しくなる感覚を教えてくれたのは、ローだけ。
「ローが、欲しい…」
顔を真っ赤にしてお願いするが、まだローは挿れようとはしない。
「っ?!」
いつの間にかローに掴まれた私の手は、彼のそそり立つものを握らされていた。
先程まで中に入っていたそれは、二人の体液でぬらぬらと光っていて、血管の浮き出るその姿は、そのままマナの劣情を増大させる。
「これが、どこに欲しい?」
「…な、中に…」
「全然わかんねぇ」
「あぁっ」
お仕置きとばかりに大きくなったクリトリスを摘まれて、ビクンと身体が跳ねてしまう。
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