main(long love story)
□double espresso.1
3ページ/37ページ
「ふぅ、本日の仕事終了っと」
ネフェルタリホテルの会員制ラウンジで、今日の売上チェックを終えたマナは、ゆっくりとMac bookを閉じて、ダブルエスプレッソに手を伸ばす。
砂糖をたっぷり入れたそれを口に含むと、甘くてほろ苦い香りが広がる。
普段のコーヒーはブラックだけれど、仕事終わりは砂糖たっぷりのダブルエスプレッソか、マンハッタンかのどちらかと決めているのだ。
普段力の入っているこめかみの力がフッと抜けて行く。
ラウンジからはすっかり暗くなった東京の街が一望できる。
副社長として仕事をこなして、心地よい空間で美味しいコーヒーを飲めている。
自分で言うのもなんだけど、若い割になかなかいい人生を送れていると思う。
(ーーーー恋愛以外は。)
マナは一週間後に控えた26歳の誕生日を思い出して自嘲気味に笑う。
ーーーちゃんとした恋愛って、もう何年してないんだっけ?
そんな事を考えながら、マナはナミとの待ち合わせ場所に向かった。