main(long love story)
□double espresso.5
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ダンボール三箱に、昨日のルックブック、それからアクセサリーボックス二つに、靴が10足。
昨日の散乱した玄関を綺麗に拭いてから、一気に荷物を集約させる。
「ーーーーどんだけ持っていくんだよ」
積み上がったダンボールを、呆れた顔で眺めるロー。
「だって、着回し企画1ヶ月分だもん。洋服とか靴とか、あと…」
手に持ったロンシャンのバッグをダンボールの横に添える。中には一週間分の下着やバスグッズが入っている。
「……」
「……」
今から2時間程前、二人でコーヒーを飲んだ。
今日の午後から次のマンションを探すべく不動産巡りをする、それまでホテルで暮らす。ーーーーそんな計画で、コーヒー片手に会社近辺のホテルに連絡をしたが、一週間以上滞在できるホテルはゼロ。大量の荷物を抱えてホテルジプシーするのも大変。かと言って、カプセルホテルや格安ビジネスホテルは、女一人では気が引けるし、心許ない。
ロビンは歳上の彼と住んでいるし、ナミはサンジくんと付き合い始めたばかり。ビビだってレッスンや結婚準備に忙しいから、頼る訳にもいかない。
充電が残り少ないスマホを見つめ、途方に暮れていると、
「ーーーーじゃあ、家見つかるまでここにいれば?」
来週のパーティに着いていくことが条件、と助け舟を出してくれたロー。
あの「餌付けランチ」についてはノーカウントにしてくれるつもりなのか。
実家は埼玉で、毎日東京に通うには効率は悪すぎるし、他に当てもないので、なんにせよーーーー断る理由などなかった。
そんな訳で、私はとりあえず一週間分の荷物をまとめに、ローと自宅マンションに戻って来たのだった。
お互いダンボールを見つめたまま一歩も引かないでいると、インターホンが鳴った。
『マナさん、宅配便でーす!』
爽やかな宅配業者が持ってきたのは、ダンボール一箱。
「…実家からだ」
母親の名前を確認し、直ぐに中身を開ければーーーー味噌、醤油、野菜、缶詰…etc. 頼まずとも定期的に送られてくる食材だった。
私はその中の玉ねぎを取り出して、しゃがんだままローを見上げた。
「ーーーー今なら食事も付いてくるけど、どうかしら?」
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