main(long love story)

□double espresso.6
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朝の7時、開店直後のカフェ。

特にお腹も空いていないけれど、店員に勧められたモーニングセットを手に、窓際の席に座る。


さて、これからどうしようか。



昨日は結局、ローが怖くてベッドには入れず、リビングで寝た。
ソファーの上で熟睡はできず、目を覚ましたのは明け方の5時。

2階の奥で眠るローを起こさないように、静かにシャワーと身支度を済ませて、家を出た。
一応、彼の朝ごはんを作ってテーブルの上に置いて来たけれど、昨日のあの様子では箸をつけてもらえないかもしれない。


「どうしよう、マジで」

コウタは今頃ランチの仕込みだろうし、商談があると言った手前、頼れない。

脇に置いたロビン•シックのショッパーには今日のパーティ用のドレスに、ローが買ってくれたシンデレラシューズ。

これを抱えて、夜8時の待ち合わせまで、どうやって時間を潰したらいいんだろう。


同じフロアには、受験生らしいカップルがいるだけだ。

可愛らしいカップル。
彼女が解けない問題を、隣の彼が解説しながら解いてあげてる。

懐かしいな。
私も試験前はコウタと何時間もカフェに篭ったっけ。


「……」


ふと左手を開いてみる。
明日、ここの薬指に指輪がかかる。

お見合いの話は、母に断らなくてはいけない。

【遅れてごめん。お見合いは行きません。今ドタバタしているから、また詳しくは明日連絡します。】


相手が学生時代の彼と知ったら、驚くだろうか。母のことだから、きっと上場企業の男性でないと、と文句を言うかもしれない。

でも、自分の人生は自分で決めるのだ。





「…あ」

メールを送信したところで、ジェルネイルのサイドがところどころ浮いている事に気付く。
左手薬指についているストーンも、少し曇っている。
これは多分、木曜日の開店準備で痛んだのだろう。




ーーーーーそうだ。

どうせなら、爪もエステも全部プロポーズに向けて綺麗にしよう。

それに、今日のパーティはローに恥を欠かせないようにしなければならない。最後の夜くらい、頭の先から足先まで、完璧な状態でいたい。



美容のフルコースなら、時間もかかる。計画的に進めなくてはいけない。私はすぐさま電話帳を開いた。




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