main(long love story)
□double espresso.11
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「…以上をもちまして、二人の末永い幸せを心より願い、お祝いの言葉と代えさせていただきます。ビビ、コーザ、両家の皆さま、本日は、誠におめでとうございます」
何度も赤の修正を入れた文章。
苦労して出来たそれを最後まで読みきったところで、顔を上げた。
「3分半だな」
ブラックフェイスのロレックスに目を落としたローは、読み上げにかかった時間を告げる。
「ちょっと時間余っちゃうね」
「いや、マナがもっとゆっくり話せば丁度いいだろう」
緊張すると早口になるのがお前の癖だからな、と言いながら彼はコーヒーカップに手を伸ばす。
先ほど二人で淹れた濃いめのブラックだ。
同棲を始めてもう3ヶ月が経とうとしていた。
彼が起きてきたタイミングで、一緒にコーヒーを淹れるのが朝の習慣になっていた。
私も寛ぐ彼の隣に腰掛ける。
「人前でゆっくり話すって、緊張するね」
「普段仕事でしてるだろう」
「まぁね。でも、こういうセレモニーは別よ」
ロビンと仕事をするようになってからは、副社長として人前で話す機会はかなり増えた。
けれど、こういうシチュエーションは全くの初めて。さらに結婚式での友人代表スピーチなんて、一体どうなるのだろう。
「…というか、最後までマナがまともに読めるか自体が謎だな。途中で感極まって泣くに1万。だからスピーチの練習なんかするだけ無駄だな、」
薄笑いをしてこちらを見やる漆黒の瞳。
悔しいけれど、この男の言う事は正しい。
卒業式やメロドラマなんかは一切泣けないのに、自分の心情に近い話や友人が絡んだりする話となると、途端に涙脆くなる。
「私も途中で読めなくなって、コーザに読ませるに1万かな」
「…それじゃあ賭けにならないだろ」
「ふふふ、そうね」
明日に控える、親友ビビの結婚式。
晴れ舞台だから、精一杯頑張りたいとは思うのだけれど。
マグカップに手を伸ばしたところで、インターホンが鳴った。
「やっほ」
ドアを開けて抱きついてきたのは、ラミ。
片手にハンドバッグと小ぶりのバスケットを抱えている。
「いらっしゃいラミ」
「何だお前、土曜の朝から」
すぐ後ろからのローの声。
「可愛い妹が遊びに来ちゃいけない?」
「…生意気な妹の間違いじゃないのか」
「ふふ、ローったら。言ったでしょう?ラミがウチに立ち寄るって、」
彼女を中に促しながら問いかければ、そういえばそんな事があった、という顔をしている。水曜だったか、ローが眠りに突入しようとしていたタイミングで伝えたから、無理もないのだけど。
「ラミ、待ち合わせあるんでしょう?早速準備しましょ」
「うんっ!」
イマイチ状況が掴めず眉間に皺を寄せる恋人はそのままに、ラミとキッチンへ直行した。
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