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□Don't watch me!
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パシャッ…パシャッ…と断続的にシャッターが下りる。
「いいねーそのまま。鋭くねー」
カメラマンの向こうにいる読者をイメージして、なんて言われたこともあったけど今はそんなの意識しなくたって表情が作れるようになった。
「よし、OK.じゃあ山田くん、次有岡くん呼んでー」
ありがとうございましたーと挨拶をして、
スタジオを後にする。
「だいちゃ-ん、次ー」
「うおっやっとかー!」
待ちくたびれたぜ!なんて言って俺の横を過ぎていく大ちゃん。
これからの待ち時間どうやって過ごそうか考えてたら、ふと思いついた。
「だいちゃん、俺も撮影見てるわ」
「えっ?いいけど…、山田台本覚えるんじゃなかったの?」
「っあ。」
「忘れてたのかよ!珍しーな」
じゃあ行ってくる〜ってひらひら手を振って下に降りて行った。
台本をカバンの中からごそっと出した。
一緒にボイスレコーダーも出てくる。
この頃自分の声で録音して覚えてみてるけど意外にこれが覚えやすくて俺の大事なお供。
『そう。だからこのトリックが必要だったんだ…』
膨大なセリフとの戦いに嫌気が差すときもあるけどこれが仕事だから。
ふと時計を見たら1時間はゆうに過ぎてて。
休憩がてらスタジオに降りる。
「おっ、いいねーそのまま!」
素肌に真っ白なシャツを羽織っただけの大ちゃんが見えた。薔薇や百合の花が敷き詰められた床に寝そべるような体勢。
カメラマンがそれを上から見るように脚立から撮影を続ける。
プツ…、プツ…、とひとつひとつシャツのボタンが外された。スタジオの空気も静かにでも甘く流れていく。
「……はぁ…、」
深く吐き出された息が艶めかしい。
「大ちゃん、なんか色っぽいね。」
「なんでだろー今日の撮影いつもとなんか違うっけ?」
他のメンバーも口々に言う。
俺だってそう思う。
俺だって同じ。
でも他のメンバーとは決定的に違うのは、
俺だけはあのだいちゃんを自分のものにできること。