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□夜に浮かぶ
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触れた空気が冷たい。
静かな機械音と共に入った部屋。
東京の街が窓の外で濡れてる。
「………、」
ホテルの最上階。
誰にも邪魔されない空間。
あまりにも静かで、
息をするのもためらわれた。
なんとなく電気を点けたくなくて
暗闇の中、窓へ近づく。
一歩、進めるごとに、体が軽くなる。
分厚いコートを脱いで床に落とす。
黒いニットもジャケットも全部。
「………ふ…、」
シャツだけの状態になって窓辺に立った。会ってすぐ素肌だけ晒せれるように。
鏡のようにも見えるそこには意外と落ち着いた表情の自分。銀の髪が雨のせいで少し濡れてる。
気にいっていつもしてるネックレスを外す。
それから左耳に手をやって
プツ…、とピアスも取った。
あいつとお揃いで買ったピアス。
怖くてあけられないっていうから俺があけてやった穴に通した色違い。
そんな思い出も一緒に外して仕舞う。捨てるわけじゃない。でも今日だけは、なんにも縛られず一緒にいたいから、
お揃いの相手じゃない、あの人と
「………裕翔、、」
はやく、俺んとこ、来て。