orion
□こっちを向いて、微笑んで。
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◇prologue◇
「涼介ー?」
「…………。」
「ね、涼介、」
「……。」
また、だんまり。
まるで僕の声なんて聞こえないみたいに。
ソファに座って台本を読んでても、リビングでテレビを見てても。
隣に僕がいてもいなくても同じ。
「涼介…。」
一緒にいるのにまるで遠距離恋愛してるみたい。
無意識に涙声になっちゃうのが自分でも分かる。でもそんなの涼介は構いもしない。
ちらりとも僕を見ない。
だから、僕はいつからか涼介を呼ぶのをやめてしまった。
やめたら確かに寂しさはなくなったけど、僕の胸には小さな穴が空いた。