orion

□甘い雫
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「山田ー先風呂入っていい?」

「いいよーゆっくりして」




その言葉に内心どきっとしたけど、何事もなかったかのように浴室のドアを開けた。




きっと俺が風呂あがって、そしたら山田もまぁ、普通に入って。


んで、そしたらたぶん今日は…





「する、よな…。」




なにを、というのは口で言わないけど。





こないだ会った時は俺も山田も疲れてて結局何もしないまま流れてしまった。

けど、今日はそんな風にいかない気がする。なんとなく。





だからこその『ゆっくりして』の意味だったんだろうし。




頭から熱いシャワーを浴びて悶々とする気持ちをどうにか落ち着ける。

鏡の中の自分はひどく緊張した顔をしていた。





一応ケア自体はいつもしてるから、体も大丈夫なはずだけど、念のためにチェック。


でも「ずいぶん長かったな」とかしたり顔で言われたら癪だからあんまり時間はかけないで。




向こうは俺のことなんてまーったく考えずにどうせゲームとかしてるだろうな。

そう思ったらムカつく。





なんで俺ばっかり、って。





でも仕方ない。俺が先に好きになったんだし。こうなることも想定済みだし。







「ぁー……。」



ざぶ、と湯船につかってもくもくと立ち上がる湯気を眺めて時間が過ぎた。


















「あがったーー」



どうせ脱ぐだろうと思って下のズボンだけ履いた状態でリビングに向かった。


喉がすごく渇いてたけど、そこにあるはずの山田の姿がなくて渇きは飢えないまま。





「……やまだ?」




あれ、どこ行ったんだろ、

まさか先に寝たとか?だったらまじで叩き起こしてやろう。


そう思って寝室のドアを開けたら中へと思いっきり引っ張りこまれた。




「−っ!?」



目ぇまわる、


ぐりんっと世界が反転して、気付いたら俺はふかふかのベッドの上に押し倒されていた。



すぐ上には綺麗すぎる山田の顔。なんでそんな笑顔なんだよ。





「な、に…」

「風呂、長かった」

「っ…。ゆっくりしていいっつったじゃん」

「ゆっくり“準備”していい、の意味だったんだけど」




やっぱりか…。このスケベ野郎め。





「な、大ちゃんこれなんで着てんの?」

「なんでって…冷えるじゃん」

「俺がすぐ脱がすって分かってんのに?」

「〜っだから…。上は着てねぇじゃん…。//」

「今度からもうなんも着てくんな。」




命令口調になった山田に完全に主導権を握られる。


そんな風にしゃべられたら誰もNOなんて言えなくなる。ほんとならむかついてもいいのに、なぜかきゅんと胸を鳴らしてしまう。




「や、ま……ンっ!」



呼ぼうとした名前が唇に飲み込まれた。柔らかすぎるそれに体中が震える。



ちゅ、ちゅ、とキスする度に出る音が恥ずかしくてたまらない。だからどうしようもなくて余った腕を山田の首にまわした。




「はぁっ…大貴…。」




熱に浮かされたような甘い声が吐息の隙間で零れた。




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