orion
□君は少しも悪くない
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最初は震えた手も今は何にも動じなくなった。
「涼介くん。ほら…足をもっと開きなさい」
吐き出されたものが中でグジュグジュと泡になる。汗まみれの手に触られて快感とは別の鳥肌が全身に立った。
「ぁ…っ…は、ぁ…。」
「もっと声を出して、我慢するんじゃない」
「あぁ…ッ!ぁ、やぁっ…あン…ッ」
まるで安いAVみたいな声をわざと出してやる。こいつはたぶん、はしたなく喘ぐほうが好みだとか言ってた気がする。
あれ、それは昨日のおっさんだっけ。
分かんねーとにかくどっちも長すぎる。いい加減さっさとイって終わらせてほしい。
「ぁあっん、ア…ッ!も、ら、め…ッ」
「イくか…?涼介くん…」
「は、ぃ…っ、ィきそ、です…ッ!」
「よし、いいよ…。私、も…っ」
今まで何度も味わった絶頂の波に再び飲み込まれる。それと同時に締め付けもキツくなる。
中だしすんなよ、と思ったけどもう遅い。ドクドクと中へと熱が吐き出された後だった。
「〜〜っぁ…ぁ…っはぁう…」
「はぁ……、いっぱい出したね、涼介くん」
ジュプ、と耳を塞ぎたくなるような音がそこから漏れた。
×××
「涼介くん、はい。これね。」
そう言って数日後渡されたのはTV好きなら誰でも知ってるようなゴールデンタイムの音楽番組の台本。
「枠は取っておいたよ。」
表紙を開くと出演者の名前の中に「Hey!Say!JUMP」の文字。
その上には同じ事務所の先輩のグループ名がいくつか並んでる。
みんな俺と同じことしてこの枠もらったのかな、とか一瞬どうでもいいことが頭をよぎる。
「…ありがとうございます。」
台本を受け取りながら頭を下げたら、ぐっと肩を抱かれて。
「今度映画の主演の話もまわせそうなんだ。」
「……ほんとですか。」
「うん。次はホテルに泊まろうか。詳しい話もそこで。」
「…はい。楽しみにしてます」
にっこりとアイドルスマイルをべったりと顔に張り付けて部屋を出た。
一刻も早く帰りたい。体が泥まみれな感じがする。
タクシーに乗り込んでひたすら時間が過ぎるのを待った。
俺がいわゆる“枕営業”を始めたのはちょうど高校生になった頃だった。
その頃JUMPはどのグループにもあるようないわゆる低迷期。
俺は知名度をあげたくて必死だった。プライベート以外の仕事の現場ではとにかくJUMPを宣伝しまくった。
でもそれでも見える形で変化がない。
いよいよ焦り始めた俺は一人で事務所に向かった。
仕事、もっとやらせてください。
短くてもいい、なにかひとつ番組さえあれば。
売れるためならなんでもします。
そう言いに行くつもりだった。なんなら土下座だって出来る覚悟も持っていた。
その日たまたま社長がいなかったのは本当に奇跡だと思う。マネージャーが取り次いでくれたのは右腕だか、ナンバー2だか、とにかく上の人だった。
『JUMP売れるためならなんでもします。仕事が欲しいんです』
高校生にしては泣かせる演説をしたと思う。我ながら。
録音しとけばよかったな、と後悔したのはずいぶん後のこと。
俺の熱意溢れる言葉にその時のおっさんは大仰に頷いて。
『なんでも、するんだね。』
『…はいっ…、ロケでもなんでも___』
そしてこう言った。
『じゃあ、服。脱いでみてくれる?』
×××
家に着いたら、一件のメールが届いていた。
マネージャーから送られてきた一斉送信のメール。
それはさっき台本をもらった番組の出演決定を知らせる連絡だった。
相変わらずこういう手だけは早いなあのおっさん。
メンバーのグループメールも見てみたら案の定みんなの喜びの声が並んでいた。
『やったー!これ初登場だね!』
『先輩も結構いるみたいだな。』
『知念よかったじゃん!』
『やっとだよ〜さっき僕らも出ますってメールしちゃった』
『お前アドレス知ってんの!?』
ぽち、ぽち、と出てくる吹き出しをぼんやり眺めながらベッドへ沈み込む。
シャワーも浴びたかったけど、今はとにかく眠い。
仕事も取れたし、みんなも喜んでるし。よかったよかった、と心の中でいつもの呪文。
いいんだ、これで。
瞼を閉じたらすぐに深い眠りに落ちた。
to be continued.