orion

□甘えてみせて
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「ねぇー…どうしたらこんな点数がとれるわけ?」

「ど…どうしたんだろうねぇ…、、」




呆れた顔をしたカルマくんが僕の目の前で答案用紙をひらつかせた。



壊滅的な点数が叩きだされてる僕のテスト。同じ問題なのにカルマ君はまた満点を取った。



白の用紙と赤い髪が対照的に光ってる。



「暗殺の計画たてんのは得意なくせにさぁ…、えー…っと、ここ、は…」




伏し目がちに机の上の答案用紙を見たカルマくん。長い睫毛が綺麗な肌に影をさした。



……かっこいいなぁ…。




「…………。」

「……ちょっと。聞いてんの?」

「………、え?」

「渚くん。見惚れんのはいいけど、とりあえずこれやろうよ」

「っ…///ご、ごめん…。」




かぁ〜っ…と顔に熱が集まっちゃう。なのにまた顔が見たくなる。赤い髪に隠された目が流れるように文章を読んでいくのが綺麗で、僕も見てほしいな、なんて思って、




「かるま、くん……」

「ん?」

「ぁ、あの…。」

「なに?また分かんなくなった?」

「いっいや…、ううん。大丈夫」

「そ?じゃあ次いくよ。ここは__」




真剣に僕のために時間を縫ってくれてるんだから。今日も暗殺いっぱいして、疲れてるのにわざわざ付き合ってくれてるんだし、



勉強以外のことがしたいとか、二人でもっと他愛もない話がしたいとか、笑った顔が見たい、とか…。


ましてや、き、キスが、したいとか……。




「ぃえない……。」

「え?なにが?」

「っあ、なんでもない…!」

「顔、赤いな」

「そ、そう…?暑いし、ね…」




はははは、と乾いた僕の笑い声。
面白そうに頬杖をついて見つめるカルマ君。


その視線に耐えられなくなって机の上の答案用紙に目を伏せた。




「っ……、」

「ねぇ…渚ってさ…」

「っ?」


急に呼び名が変わって、咄嗟に人がいないか確認してしまった。別に誰に聞かれたってだめなことないのに、どうしても恥ずかしくて。


そう呼ばれて僕がどんな顔をしてるのか見られるのが恥ずかしい…。




それぐらい、今の僕は顔が真っ赤だと思う。




「渚、って…」

「な…なに…?」

「甘えるの、下手だよね。」

「えっ!?///」

「さっき、俺のこと見てたときなに考えてたの?」

「っ!///な、ん…っ」



ぷちゅ、と柔らかい唇がぶつかる音。瞬きを繰り返す瞬間も目を閉じずに射抜くように僕を見てる。




「……っ、っ…、////」

「…は……、」


ゆっくりと音もなく唇が離れたら小さくカルマ君が息を吐いた。




「キスしたいって思ったでしょ?」

「ぃ、ぅ…え?ぁの…っ///」

「ずっと俺のここ、見てたよ」



そう言ってとんとん、と人差し指で唇をさす。





「〜〜っ…////」

「かわいいけど、無防備すぎ」

「そんなことないよ…!」



無防備だなんて、暗殺者がいちばん言われたくない言葉だ。



「ほんとに?」

「カルマく、…っん…!」



またつぷ…と濡れた音と一緒に唇が触れた。でも今度は触れるだけじゃ済まなくて、熱い舌がちろりと唇を舐めた。



ふる…っと震えた体が、いつも授業中座っている椅子とアンバランスでいけないことをしてる気分になる。

机から身を乗り出すようにしてキスをしてくるカルマ君は少しも息があがっていないのに。



「っ…ん、ぅ…、ふ…っ」

「……はぁ…、」




ちろちろと炙るような熱が体中を駆け巡って眩暈がする。酸欠でぼーっとする視界の真ん中に優しく笑うカルマ君。



「……ん、」

「っぷは…!は…っ」

「息止めてた?ごめん」

「っ……、」



座ってるのにぐらぐらして、支えてもらえないと床に倒れちゃいそう。

もうさっきまで考えてたはずの問題なんて思い出せない。




「はっ……はぁ、」

「渚、目がとろんとしてる。かわいい、」

「〜〜っ…//も、ぃいよ…いちいち、言わなくて……///」

「なんで?(笑)」




くすくすと笑うカルマ君が夕日に照らされて否応なしに綺麗に見える。



「渚、帰ろ。」





差し出された手に今度は素直に甘える。





僕より少し早い鼓動を感じた気がした。






fin.

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