orion

□heal
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「ただいまぁー……」




バタバタと靴を脱ぐ音がしてかけていた火を弱めた。フライパンにフタをして玄関に向かう。




「おかえり、」


出迎えたらそこには疲れた顔をした裕翔がいた。




「んぁー……、」


かばんを受け取ろうと伸ばした手に裕翔の手が重ねられて、ちょこんと肩にあごが乗せられる。


Tシャツの襟口から微かに煙草のにおい。接待に付き合わされたのかもしれない。


だいぶ疲れてるな…。





「裕翔、お風呂入る?」

「んー…いぃや、明日の朝入ろうかな…」

「分かった。食べれそう?一応作ったけど…」

「あーどうしよっかな、明日でもい?」

「うん。日持ちするし、大丈夫。」

「そっか。ごめんな、」



ううん、と首を振ったらきゅ、と柔く抱きしめられて解放される。



裕翔が自分の部屋に戻ってる間に、俺はキッチンに戻った。

出した料理全部にラップをかけ終わる頃、ラフな部屋着に着替えた裕翔がリビングに来て、そのままベッドに倒れ込んだ。





「ぁー……つかれた、」




枕に顔を埋めてるのかくぐもった声。


俺も寝よっかな、と思いながら片づけてたら、




「……りょーちゃーん」





ベッドから小さな声。
見ればちょいちょい、と手招きをしてる。



普段は絶対言わない呼び方がくすぐったくて、変なのと笑いながら、吸い寄せられるようにベッドへ近づいた。


うつ伏せになって目を閉じてる裕翔の顔のすぐ隣に腰かける。




「なに?」

「つかれたよぉ」

「ね。大変だったね」

「うん……。」



無造作にはねる黒髪を優しく撫でたら、膝に頭をのっけてきた。

甘い重みと体温がじわりと伝わる。





「りょうちゃん、」

「っふ、なんで急にそんな風に呼ぶの?(笑)」

「分かんない、呼びたくなった」

「裕翔、へんなの。(笑)」




くすくすと笑ったら、ぱちりと目を見開いて唐突に起き上がった。


そのままベッドについた俺の手に自分のそれを重ねて、唇が触れるぎりぎりまで顔が近づけられる。



でも肝心のキスは与えてはもらえない。





「……もぉ、」



仕方ないなぁ、小さく息を吐いて俺からキスをした。




ちゅ、と触れるだけのキス。



いつもは裕翔が顔を傾けて俺にキスをするけど、今日は俺がそうするほうみたい。


微かに首をかしげて、ちゅ、ちゅ、と口づける。



目をあけたら、少し眠たげなとろんとした瞳に俺が映っていた。





「っ…ふ、」

「……ん…。」



最後に少し長めにキスして体を離す。体が少し、熱い。




「…どう?」

「んー……足りない。」




ちょっとむっとしながら、裕翔はバフっとベッドに体を沈めた。

求めるように指が絡められる。





「じゃぁ…今日は俺がしてあげる。それでいい?」

「ん。」



こく、と頷いた裕翔にゆっくりと覆いかぶさって、またキスをする。


口付けたら、迎え入れるように薄く唇が開けられて、その隙間に舌を伸ばす。

ちゅる、と唾液が絡む音がして一気に体に熱がこもった。




「……っん、…っ」

「ふ………。」




微かに漏れ出た声が恥ずかしくて、キスでごまかした。

裕翔の顔の横についた手が、無意識にシーツを握ってて、そこだけ皺になってる。




「、っ…ん、ぅ…っ」


裕翔いつもどうやってしてたっけ…



いつも俺がされるほうだから、どんな風にしたらいいのか分かんない。


裕翔とのキスは全身の力が抜けちゃうくらい気持ちよくて、我慢したくても声がでちゃうのに。





頭の中で必死に裕翔のキスを思い出そうとするけど、どろどろに溶けた思考じゃもう役に立たない。




「っはあ……。」


すぐ息が苦しくなって、唇を離したら裕翔も息を吐き出した。

熱い息が首筋にかかってぞわりと鳥肌がたつ。




「裕翔……、ッん!」



するりと服の中に入り込んだ左手が、腰を撫で上げる。



そのまま熱い手のひらが上下に脇腹を這っていく。ゾクゾクと背筋を快感が走り始めて、俺は慌ててその手を制した。




「っはぁ…っ、裕翔…、だめ、」

「…うん。」

「っぁ…ちょ、っと…んん…ッ」



だめだっつってんのに…っ


しゅるりと裾から入ってきたもう片方の手が、言うこと聞かずに悪さをする。


触れる度、びくんっと跳ねる俺の体を楽しむように、止まらない手。




あぁもう…力入んなくなってきた…


ベッドについた手にだんだんと感覚がなくなってくる。



「っ…、っ…!ぁ…っ」

「涼介…」

「も…っ、裕翔!」



胸まで這い上がってきた手をなんとかとどめる。すっかり体が熱くなっていた。


「はぁっ…。今日は、俺がするっていってんじゃん…。裕翔は大人しくしてて、」

「…ふふ、ごめん。」



言えば名残惜しそうに服の中から手が抜かれる。触れられたところだけ、ビリビリと痺れが残った。



たまには俺だって主導権握りたい。

重く感じる自分の手になんとか力を入れて裕翔の服を脱がせる。


均整のとれた体が露わになって、星座みたいに散らばったほくろが見えた。






俺も自分の服を脱いでベッドの下に投げた。
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