moon

□愛おしい恋あり
2ページ/4ページ



雨が本降りになったと同時に
「駅着いた」ってだいちゃんからメール。




あーあ、ほんとに濡れて来るな。




タオル用意しとくか、って洗面所に足を向けたらチャイムが鳴った。




「やーまーだくん。あーけーて!」


まだ玄関のドアも開けてないのに
でかい声出すから俺は慌てて走る。



「ばか!近所迷惑…っわ、」


開けた扉から滑り込むようにして入っただいちゃんの体が俺の体にぶつかった。



「やーまだ、」


「っ、なんだよ、濡れんだろ」


「いいじゃん、ちょっとだけ」


「よくね、っちょ、」



体を離そうとしたら逆にその手を掴まれて
反対の手が首にまわされた。



ああ、キスされる、って思ったのとほぼ同時に唇が重なった。




「んっ………ふ、」



雨に濡れたせいか冷たい唇に
俺の熱が移ってじんわり熱くなっていく。



こめかみから滴る滴がまるで汗みたいで
玄関で抱き合ってる錯覚を起こしそうになる。




「っふ、ん…だい、きッ…」



やっとの思いで離した唇もまた追いかけられて。


なんでもいいけど、息ぐらい吸わせろよ。
苦しい。


心の中じゃ悪態つけるのに、
頭はどろどろに溶けて。




「やまだ、ベッド、行こ。」



呟くだいちゃんの言葉が
違う国の言葉みたいに聞こえた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ