moon

□xxx...U
2ページ/8ページ




「……っ、っ」




やばい、追いかけて来る。

あの足の長さで追いかけられて捕まんないわけない。




「待って、やまちゃん…!!」




早すぎんだろ、

ってか俺テレビ局ん中走り回ってなにやってんだ。




こんなとこ誰かに見られたら______





ぱた、って足が自然と止まった。
いつだってグループのセンターだって自覚が俺をセーブしてくれる。



そしていつだって…縛る。







「やまちゃ……「なに、ゆうてぃもトイレ?」


「え?」


「俺ケータリング食いすぎちゃったみたいでさー超おなか痛かったけどもう大丈夫!」


「え、いや…。」


「ってことだからもう戻るわ。ゆうてぃもあんまトイレできばんなよ?笑 みんな待ってっからさ」


「待って。やまちゃん。」




へらへら笑って通り過ぎようとしたら
いとも簡単に腕を掴まれて。





「やまちゃん、ちゃんと話そ」


「__________なにを?」




問うた顔がピシリとひきつった。



苦しそうな裕翔の顔。
俺だって、





「なに?別れ話?笑」




笑いながら、自分の顔から表情が抜け落ちるのが分かった。




こんなことが言いたいんじゃない。
ほんとは追いかけてきてくれたことも、ほんとは、あの映画だって、




「………離して。裕翔」


「………やまちゃん、」


「____離せって!!」





シン...としたロビーに俺の場違いな声が反響して、泣きたくなった。




するり、抜けた腕。

足、動け。

振り向くな、泣いてんのバレる。







ただ床のタイルが過ぎていくのを見て歩いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ