orion

□In Shingapore
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「…っっ…慧…はぁ…っ」

「大ちゃん、息、してる…?」




熱いお湯の中で完全に腰が立たなくなった。もう足もついてるだけで重さしか感じない。


のぼせた、伊野ちゃんのせいだ。



綺麗な指が俺の顔をなぞって、髪をくしゃりと揉み込む。その手に甘えるように頬をすり寄せたら、一瞬驚いた顔をして俺を抱き上げた。





「掴まっててね?」

「ん、っ…、」



抱えられるみたいにして浴槽を出て、脱衣所も通り抜ける。咄嗟にバスタオルを掴もうとしたけど間に合わなかった。

空気だけを掴んだ指が行き場をなくして、結局伊野ちゃんの濡れた背中に触れる。



ドサッとふかふかのベッドに下されてすぐ、覆いかぶさってくる体。


まだ体拭いてもねぇよ、シーツが濡れちゃうのに、ってかルームサービス何時にしたっけ、もう分かんねーや…




「んんっ……はぁ、っふ…!」

「大ちゃん…、は……っ…」



熱に浮かされたような声。
するすると下へ降りていく唇がくすぐったくて鳥肌が立つ。手を伸ばした先に伊野ちゃんの濡れた髪があって、思わず掴んだ。


「…っ、くすぐったい、って…っ慧…ちゃんと、んぁっ…!」

「ごめん、分かってる、」


伊野ちゃんは俺の顔の前まで上がってきて、キスをした。腕をまわした背中はもう水が飛んで、かわりに汗が浮かんでいる。


「ん、ふ…っ、ぁ…っ!」

「大貴、やばい…っ」



2人で寝ても広すぎるほどのベッド。シーツが足に絡んで体の下で皺になってる。



外国のシーツって日本のより肌触りいいんだ、においもちょっと違う。汚したらやばいかな、でもまぁいっか、日本よりそういうのゆるそうだし____


散らかった思考がまとまらないまま浮かんでは消えていく。



身体のラインをなぞる伊野ちゃんの指にばっかり意識がもっていかれる。



「っ…、大貴…力、抜いて、」

「……っ…むり、いぅな…ってば、はぁっ」


息もちゃんと出来ないのに、どうやって、


それでもはくはくとなんとか呼吸を繰り返してどうにか肩の力を抜いた。



「ん…、っ…はぁ…っけ、ぃっ…」


絡めた足が震えておぼつかない。ズチュ、猛りが蕾に押し当てられてすぐ、目の前に火花が散った。


「ッぁあ…!!ら、ぁ、あ…!」

「……っく、っう…!」


喘ぎ声しか出ない自分の口がいい加減いやになるけど、止まらないんだからしょうがない。


「ぃッあ…!ぁあっう、慧、ま、ぁ!」

「大、貴ッ…ぁ、やばぃ…ッ」

「…ぉ、れも…ッだめ、も、〜〜ッあぁ…!!」


迸った熱が全部吐き出される頃には全身の力が抜けていた。



「〜っぁ…はぁっ…ぁ…っ」

「大ちゃん……はぁ、大丈夫…?」

「っん……へ、ーき、」


倒れ込んできた体を受け止めたら伊野ちゃんもすごい汗だった。乾いたはずの髪がまた、濡れて額に張り付いてる。



「はーー、つかれた……、」

「……ふ、また汗だく、」

「水、飲む…?」

「ん、いる、」


チェストボードに置かれたペットボトルを手に取って口を付けようとした伊野ちゃん。俺はなんとか力を出してその手からボトルを奪い取った。


「……ん、は____っ」



飲み下した水が全身に澄み渡っていく。こくこく、と俺の喉が動く音だけが部屋に響いた。



「ぁ、全部飲んだの?」


残念そうな声を出した伊野ちゃんに下から口づける。そしたらぐるりと体が反転させられて、口の中にわずかに残った水が吸い取られた。



「……っぷは……っ」

「ごはんまで、なにする?」




形のいい唇が楽しげに呟いた。




音もなく閉じられた瞼を見ながら、返事のかわりにキスをした。




fin.
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