orion

□こっちを向いて、微笑んで。
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「ちねん、!今日、さ…ごはん…とか、行かね?」

「………いいや、ちょっと忙しいし。」

「……そ、っか。じゃあ…また、今度…な、」

「………うん」





たたっ、と楽屋を出て行った知念を見送る。







大丈夫。大丈夫だ。

ただ、飯断られただけじゃん。


別にそんなの今までにも何回かはあったし。忙しいんだから無理させるわけにいかないし。


知念にだっていろいろあるだろうし。



返事も、普通に返ってきたし。


目だって今日は合ったし。






「……だいじょうぶ。」




少し前、俺の肩を叩いて明るい声でそう言った大ちゃんを思い出す。そう。大丈夫。



全然なんともない。全部うまくいってる。ぜんぶ。




言い聞かせるようにもう一度言って息を吐く。





これを繰り返してもう何日経ったのか分からなくなっていた。





………







「山田、あれから知念とどうなった?」

「ぁ…大ちゃん、」




すとん、と流れるような動きで俺の前に座った大ちゃん。無垢な瞳がただ俺を映す。




どうしよう、大ちゃん。

俺、知念に嫌われたかもしんない。

なんか分かんないけど、急に話せなくなったんだよ。

無視されんの怖くて、俺から話しかけらんなくてさ。

そしたら一言もしゃべらないで終わんだ、一日。

今まであんなに「涼介、涼介、」って甘えてきてたのに、なんでだろ。

俺なんかしたんだな…きっと。

傷つけるようなこと、なんかしちゃったんだろうな。

だってそうじゃないと、理由もなしに知念が俺のこと無視するわけないし。

嫌われた、とか…俺の被害妄想だよな。

大丈夫だ。

全部うまくいってる。

全部、






「大丈夫だよ。いつも通りやってる」

「そっか!よかったな!」

「おー。」

「珍しいこともあるもんだな、やまちねにも。」

「ははっ(笑)まぁ、たまにはな?」





言う声が枯れてしまいそうで、笑った顔も引き攣ってたけど大ちゃんは気付かず見過ごしてくれた。




「今度ベストで飯行くんだよね。」

「へ、へぇー。久しぶりにベスト会?」

「おー。セブン会は?この頃やんねぇの?」

「ぁ…そうだな、そろそろやろうかな」

「うん。仲直りしたんだし、知念も誘ってさ。」

「そー…だな、うん、」





セブン会っつったら、知念も行きたいって言うかな。

久しぶりだし、ゆうてぃと圭人も行くっていうだろうし。

そしたら知念だって。

喜んでくれるかもしんないよな。

笑って「行く!」って言ってくれるかも。





「……誘ってみる。」

「おう!」




言ったそばからばくばく心臓が跳ねて、またあの嫌な締め付けられるみたいな痛みに襲われる。






だから深く息を吐いて、また繰り返した。







「…だいじょうぶ。」
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