短編

□140字SS
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ツイッターで過去にちまちまと書いてた140字SSの詰め合わせです。お題は診断メーカーより。ジャンルはモブサイが多数、ワンパンは1つのみです。


▽影山茂夫/mb100

『誰も欲しくない』
ごくりと唾を飲み込んだ。だって貴方はいつだって、可愛いあの子が好きだったはすで。それなのに頬を染めながら手をぎゅっと握りしめる彼は、紛れもなく私を見てそう溢したのだ。「貴女がいれば、」照れたように微笑んでそう続けた彼に、私は息の仕方を忘れる。


『ちょっと黙って』
最初はほんの出来心だったのだ。鈍感な彼をどうにか嫉妬させたくて、私霊幻さんに惚れそうかも、なんて彼に聞こえるように呟けば次の瞬間私の視界は反転した。嘘、冗談だと幾度となく繰り返せど全く聞く耳を持たない。挙句に彼は驚く程低い声でそう溢し、そして私の口を塞いだのだった。


『受け止めてくれるのはあなただけ』
彼女はいつも笑って僕と話してくれた。空気読めだなんて誰かが言った。けれど彼女はそのままの僕でいいんだよって言ってまた笑ってくれて。その笑顔が愛おしいと感じるようになったのは果たしていつからだろう。この想いを伝えても、彼女はいつもみたいに笑って受け止めてくれるだろうか。


『制限時間はあと一分』 ※モブパズネタ
あの、とモブくんの声が横から聞こえるけれど、私は今画面のパズルを消すのに必死でそれに答えることができなかった。しかも今回は絶好調、このままいけばハイスコアは確定だった。しかし残り十秒、不意に手からスマホがすり抜け彼の唇が邪魔をする。画面にはタイムアップと刻まれていた。


『逃げるなよ、追いかけたくなるだろ』
目が合った瞬間あからさまに顔を背けてしまう彼女に、僕は何とも形容し難い感覚に襲われる。そんな彼女の顔は決まっていつも真っ赤だ。声をかければまた一段とその頬を染めながら僕から離れようとする彼女にぞわぞわと自分の中で何かが疼いて、次の瞬間には彼女の腕を無意識に掴んでいた。


『来世でもよろしく』
私達って次生まれる時は何になるんだろう。なぜか帰り道でそんな話になって、私と彼はそれを必死になって考えた。やっぱり人間かな、いや猫かもね。そんな空想を繰り広げながら歩く。「でも次もまたこうやって手を繋いでたい、な」小さく漏れた彼の声が、どうか来世まで届きますように。


▽影山律

『長く一緒にいた影響』
6年間ずっと同じクラスという奇跡が、遂に7年目にして途絶えてしまった。何かと近くにいた彼の存在が最早当たり前になっていた私にとって、その穴は思いの外大きくて。寂しいな、ぽつりと呟けば「じゃあ一緒に帰らない?」不意に落ちた言葉に胸が苦しくなった。


『幸せにはできないけれど』
彼女はいつだって兄さんが大好きで、可愛い可愛いとまるで息をするように溢す。僕はそんな彼女の手をぎゅっと握った。どうしたの弟くん?兄さんの話をやめて僕の顔を窺う彼女に好きです、言葉があふれた。こんな小さな告白など、彼女にとって妨げにしかならないことを僕は知っていながら。


『地獄へ道連れ』
不意に後ろから抱き竦められて一瞬息が止まった。いつもの彼からは想像できないような低く艶やかな声が耳を擽り、そして囁いたその2文字の言葉はいとも簡単に私達を狂わせてしまう。駄目だよりつ、しかしそんな私の抵抗はすぐに唇で塞がれた。呆然とする私を見て彼は笑う。「これで同罪だよ、姉さん」


▽花沢輝気/mb100

『寂しいなんて言えない』
いつもの帰り道、この曲がり角で僕たちは別れる。じゃあねまた明日、ふわりと笑って背を向ける彼女の袖を僕は反射的に掴んだ。振り向いた彼女がどうしたの?と顔を覗き込んでくる。思わず出そうになるその言葉をどうにか飲み込んで、僕は誤魔化すように笑った。


『いつもの癖』
彼女は嘘を吐くのが下手だ。他人は誤魔化せても僕には分かってしまうその仕草。自然と緩む口元を隠しながら彼女に近付きその肩を叩く。そして振り向く彼女に僕のこと好き?と聞けば慌てて否定された。前髪触ってどうしたのかな?そう指摘した途端顔を真っ赤にさせる彼女に僕は目を細めた。


▽霊幻新隆/mb100

『幸せになれなくてもいい』
彼は自分といてもお前は幸せになれないと言う。幸せ、幸せってなんだ。収入の安定した高学歴イケメンと付き合うことが世の幸せというのなら、私は一生幸せになんかならなくていい。目を逸らさずにそう告げれば彼は僅かに狼狽えて、そして降参とでも言うかのように私の頬を撫でたのだった。


▽エクボ/mb100

『世界で一つだけの願い事』 ※守護エクボ
どうした嬢ちゃん、夜空なんか見上げて乙女チックに願い事かい?なんて心地よい低音が響いて、私は弾かれたように顔を上げた。髪を荒っぽく撫でて目を細めてみせる彼が私は何より好きで、そして悲しくなる。何願ったのか当ててやろうか。そう言いながら、彼もなぜか悲しそうに笑っていた。


▽徳川/mb100

『新手の誘い文句ですか?』
「分からないな」珍しく苦悩の表情を浮かべる彼に瞬きを数回。そんなに解けない数式があったんですかと聞くが違うと言う。じゃあ何だろうと首を傾げれば切れ長な彼の瞳が私を貫いた。途端に上がる心拍数から逃れるように顔を背ければ「お前のことだ、教えろ」耳元で囁かれては動けない。


▽桜威/mb100

『憎ませてもくれない』※3つ連投
慣れない感覚だった。今までの姿勢を改め晴れて社会人となった今でも、やはり俺は他人を信用することが出来ずにいた。「あ、桜威さんお疲れ様です!」今の俺には眩しすぎるその笑った顔。反射的に目を逸らした。自ら壁を作っていれば自然と人は寄り付かないものだと思っていたが、この女だけは違った。
奴は俺と違い、人を疑うことを知らないようなお人好しだった。「どうぞ」一切臆する様子もなく缶コーヒーを手渡される。出来れば関わらないで欲しい。またどうせ、お前も俺を馬鹿にするのだろう。そんなふうにしか考えられない自分が愚かしい。しかし奴は、そんな俺の前に図々しくも顔を覗かせたのだ。
「ほらまた眉間の皺!」奴の瞳が俺を捉え、可笑しそうに細められた。不躾なはずのその行動が何故か不思議と嫌ではないのは、ずっと俺が刺され続けてきた視線とは全くの別物だからか。本当におめでたい奴だ。確実にこの身を蝕んでいく妙な違和感に甘え、俺はゆっくりと目を閉じ口元を緩めるのだった。


▽音速のソニック/op

『もう、昔の恋だよ。』
家から少し離れた公園に、決まって奴はいた。俺を見つけてはあ、そにっくくんだ!と目を輝かせてその間抜けな笑顔を向けるコイツは、同い年ながら俺とは真逆の世界で生きている。一生相容れぬはずなのにいつだって奴は躊躇わず俺の手を引くのだ。大人だって恐れて近付こうとしない。本当に阿呆な奴だ。
『君なんていなければよかった』
今更人を殺めることに迷いなど無論ある筈もなく、そもそも感情自体存在しない。最強になる為、俺は只管に任務を請け負い己を高めていた。あ、ソニックだ!優しい声に眩暈がする。変わらず間抜けな顔を奴は俺に向けた。また一段と格好よくなった?頼むから笑うな。お前の存在が、俺を苦しめるのだから。
『こうするの、好きだったよね』
あの時から別に変わってなどいない。そう返せば奴は首を振って否定した。遠くなっちゃったよとまた笑う顔はどこか儚い。手を握られた。小さな手の感触はやはりあの時と何ら変わっていない。この想いも、全て。俯く奴の頭をゆっくり撫でる。好きだっただろう?…好きだよ。震える肩に俺は手を伸ばした。





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