Unknown
□Steadly snow
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drop
降り続ける雪は、窓の外に延々と広がる平原、もとい畑を純白で覆い尽くしている。
今は丁度日没の刻限なのだろうけれど、せっかくの夕焼けは吹雪に隠されてしまっていて見えない。
とうに見慣れている故郷の景色とはいえ、気は滅入るばかりで。
ヒラは憂かない顔で空港のラウンジの広い窓から外を眺め、止む気配の見えない雪に機嫌の悪さを表すような見事な半眼になる。
東京に1日泊まるだけですぐにとんぼ返りという只でさえも不満の多いスケジュールだったのに、その上更に条件が悪くなるなんて。
もしかしたら、この雪は散々文句を言った罪で天から下された罰なのだろうか。
だとしたら、深く反省するから今すぐ降るのを止めて欲しい。
昼過ぎには東京に着く筈だったのに、この吹雪のせいで予定は大幅に遅れてしまっている。電子掲示板には先ほどから遅延、運休の文字が踊っている。
迎えに来てくれる筈だった恋人兼実況仲間は流石に来ないだろうな。
メールも満足に届かないし、そもそも予定の時間からは、もう何時間も過ぎているのだ。
そんな事を考えながらぼんやりと窓を眺めていると、硝子につたう雫が目の前でぴたりと止まった。
そこに映った逆さまの風景に、ヒラは思いがけず息を呑む。
水滴の空に小さく覗いた青色は、窓から見上げた空にも確かに存在して。
俺は、このまま雪が降り止んでくれればと願った。
その願いが通じたのか、しばらくすると先程までの荒天が嘘のように空には雲一つ無くなった。
復旧とお詫びのアナウンスが流れるや否や俺は立ち上がり、地図を確認しながら指示された番号の乗り込み口に向かった。
今急いで乗り込んでも、しばらくは機内で待つことになってしまうのだけれど、どうしても気持ちは急いてしまう。
座席は確か、Fの4だったかー…
東京は今週中ずっと雨なのだという。
飛行機から降り、羽田空港からのバスで自宅付近の駅に帰ってきた今も雨はざあざあと降り続け、アスファルトの地面を濡らしていた。
最近はこの辺りにも外国の人が増えたなー…と辺りを見回し、駅の屋根の下、ふと目に留まった恋人の姿にヒラは絶句した。
電子機器が入っているので見かけによらず重い荷物を引きずって、慌てて走っていくと、彼もこちらに気付いたのか大きく手を振ってくれて。
「ヒラ、久しぶり。」