Unknown
□Important stuff
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Important stuff
無理矢理に心の奥のほうに押し込んで、触れないようにしていた。
いっその事忘れてしまえればどんなに楽だろう、と思っていた。
けれど、くだらない、と捨て去る事はどうしても出来なかったのは、それがとても大事なものだから。
「…じ、フジ?」
肩を叩かれてフジははっとした。
「どしたの?ぼーっとして。」
ヒラが眉と眉を近付けて尋ねると、フジはぱちぱちとまばたきをする。
「あぁ…ごめん。ちょっと魂が抜けてた。」
「たましい……?」
「そうだ!何か話してたの?」
「うん、来週の日曜日四人で花火にでも行こうかって話になってるんだけど、どうする?」
そう言いながらヒラはこてん、と首を傾けた。
その仕草に何故だか少し動揺しながらも、フジは平静を装って答える。
「来週…は、多分大丈夫。」
「そう!良かったー!」
途端にヒラはぱぁっ!と笑顔になり、じゃあメールするね、と言って携帯をいじりだす。
その頭のてっぺんに、昨日までは無かった寝癖がふよふよと揺れているのに気付き、手ぐしでその寝癖を軽く整えると、ヒラは不思議そうにこちらに視線を向けてくる。
「寝癖ついてた。」
「え、まじ?さんきゅ。」
そう返したヒラの、どうにも気の抜けた声の調子がおかしくてフジは思わずくすりと笑ってしまう。
「何笑ってるのー?」
「いや、ヒラは可愛いねぇ。」
「はっ?素面で男にかわいいとかフツー言う?」
「んー、ヒラはかわいいから。」
なおも可愛いと繰り返すと、ヒラはむう、と頬を膨らませ、肘で小突いてくる。
「ごめんごめん。わかったから、痛っ!」
「わかってないー。」
ヒラは完全に拗ねるモードに入ってしまったようで、意味もなくぱたぱたと床を叩いたりしている。
「褒めてるのにー。」
「あぁ、じゃあ、何ならフジも試す?」
「え、
試すって、何?
そう聞こうとしたフジは右隣のヒラの醸し出す妙な気迫にたじろぐ。
ヒラは体を傾け、右手でフジの耳にかかった髪を掻き上げ、素早く耳元に口を寄せて囁く。
「ふじ。」
ふじはかわいいねぇ。
少しかすれたその声は普段の彼のどちらかというと子供っぽい声とは全く違って、艶めいていて。
フジは体中の血が一気に顔面に集中するのを感じた。
「い…、今のは…。」
反則過ぎ。そう顔を背けながらつぶやいた声は、どうやら聞こえなかったようで、ヒラはしてやったりという顔で笑っていた。