Unknown

□Rains a lot
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ーーー

雨が降っている。
窓ガラスに額をつけると、あっという間に体温が奪われていく。
一年ぶりの、台風。

今日は特に外出する予定もなくて、家でじっとしているのはいつもと同じなのだけれど、何だか憂鬱。

机の上に置いたスマホをちらりと見やる。
誰かにLINEでも送ってみるか。
こんな日だからどうせ皆暇してるだろうな。

まさにそう考えていた時、ぶるる、とスマホが唸って、メッセージの到着を知らせてくる。
すっかり聞き慣れた着信音は、レトさんからのメールが届いた音だった。

「キヨくんち、駅から近いじゃん。濡れるの嫌だからそっち寄っていい?」

それを読んで胸が弾んだ。
そりゃ好きな人が家に来るのが嬉しくないやつなんていないだろう。

濡れているだろうからふわふわのバスタオルを用意して、適当に刻んだ野菜と鶏ガラ出汁でスープを作る。
俺は野菜はあまり好きじゃないけれど、レトさんは喜んで食べるから、いつも冷蔵庫に入っている。
風の音に紛れてチャイムが鳴る。
慌ててドアを開けた。
案の定びしょびしょになったレトさんが顔を出した。

「キヨくん突然ごめんなぁー。」
「いやいや、雨ひどいよな。」
「もう凄い濡れちゃった。」
「体冷やすといけないからすぐ拭いて、あとスープもあっから。」
「まじで?めっちゃ嬉しいわ!」

濡れたレトさんはちょっと色気があって、めちゃくちゃ貴重。
笑った顔も可愛くて、写真に撮りたいぐらい。
レトさんはすでに上がり、スープの食器を出していた。この慣れた感じがいい、と思う。

「このスープいっつも美味しいよね。」

そう言ってスープをすするレトさん。
笑顔がもう心臓に悪い。

「まじてキヨくんお嫁さんにしたいわ。」
「え?」

オヨメサン…!?

「毎日キヨくんの料理食べたい、ってキヨくん何で顔赤いの?」
「赤くない…。」
「いや真っ赤やん。熱?」

レトさんはそう言うと、俺の額に手のひらをぺたんとつけた。

「……!」

まずい。顔が赤い。

「ああでも普通やな…あれぇ?耳まで赤いし、ほんと意味わかんないわ。もしかして」

ああ、もう。
どうせバレるならはっきり言ってしまおうか。

「ねぇねぇレトさん。俺さ、レトさんの事好きだよ。」
「よし言ったぁ!」
「は?」

ヨシッタァ?

「やっとや!この時を待ってたんや!」

レトさんは何を言っているのだろうか。

「キヨくん俺な、ずっとキヨくんの事好きだったんよ。でもなんか俺から告白すんの恥ずかしいやん。でさ、そんなこんなでしばらくうだうだしてたら、キヨくんも俺の事好きなの分かったのね。それからずっと色々画策してたんだよね。いやー苦労が報われたわ。勝負に勝った気分。」
「てめぇ…。」

今は思いがけず両想いで嬉しいシーンじゃねーのかよ!?
信じらんねーわこいつ。

「一生恨む。」
「えー。」
「まぁ一生好きでいるからいいだろ。」
「……!」
「お、レトさん今照れたから俺の勝ち…うわ?」
「今のキスでおあいこだぁ!」
「ちょ…。あ、じゃあ第2ラウンドは夜に…。」
「キヨくん何言ってんの?」
「ごめんなさい。」

ーーー

またコメディになってしまった!
オチに行き詰るとコメディに逃げている気がします。

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