Unknown

□Illusion
2ページ/5ページ

IllusionU

彼がこんな事をいきなり言い出した時点で僕にはわかってしまった。これは夢の続き。都合の良い自分の夢の中での出来事なんだという事が。
だって、彼は今までそんな素振りを見せた事すら無かったのだから。それこそ夢の中でさえ、一度も。
……そうわかっていてもどうしようもなく高鳴ってしまう胸、速まる鼓動。ままならない自らの心に苛立つ。

「何で……。」

僕が思わず発してしまった言葉を勘違いしたのだろう。彼は一拍の間を置いて答えた。

「夢で、pーpを見て。我慢出来なくなって。自分勝手だってのはわかってるけど、こうやって勢いづいてる時じゃなかったら到底pーpに告白なんて出来ないって思ったんだ。」
「pーpに会って、笑いあって、手をつないで……、触れていたくなったんだ。」
「だからさ……pーp、俺と付き合ってくれない?」

僕が今までずっと望んでいた、そしてその一方で今の僕が恐れてもいた言葉をつわはすさんは口にした。
湧き上がってくる欲求に抗えず、僕は勢いのままにつわはすさんをソファに押し倒した。
つわはすさんは瞬く事もせずにじっと僕を見つめる。彼の頬はだんだんと朱に染まっていった。
僕はやはり無言で、震える指で彼の頬に触れた。けれどしばらく待ってもつわはすさんは消えたりせずに、ただ一度身じろぎをしただけだった。

「何で……消えないの?これは夢なんだよね?何で……?」

僕は呟く。キスをしたら魔法が解けるなどというような馬鹿な事を信じていた訳ではないが、なぜだろう。僕はゆっくりと自分の顔をつわはすさんに近付けた。唇があと少しで触れ合うという時、つわはすさんは素早く右手で唇に蓋をした。それで僕は彼の手の甲にキスをしてしまう。

「pーpがこれを夢だって思ってるんだったら……、別にキスなんてしてくれなくてもいい。」

妙な格好のまま動けないでいる僕を見つめながら、彼は顔を赤くしつつも、どこか拗ねたような口調で言った。そして僕の体を片手で支え起こしながら自分もゆっくりと体を起こす。

「夢の中の僕にpーpを取られるとか、冗談じゃ無いし。やっぱり今日はゆっくり考えてくれればいいから。」

じゃあね、と言ってつわはすさんはさっさと帰って行ってしまった。後に残されたのは、ただただ呆然としている僕一人。
起こった事にいまいち頭が付いて行かないで、ソファにへたり込んだ……と言うよりは、崩れ落ちた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ