おねえさまは毎日タイクツ

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「ヤベー!こんな美人が彼女になってくれるなんて夢みたいっす!」

その後、俺達は無難に駅前のファミレスに入った。自分でも笑っちゃうくらいテンションが上がってて喋るのを止められない。でもあんまり1人で喋ってっと引かれるかな?

「ぜってーフラれると思ってました!
つーか彼氏いると思ってました!」
『てかね、いいの?私のことなんにも知らないでしょ?』
「はい!なんで、これからいっぱい教えてください!」

ニッと笑うと優しく微笑み返される。さっきから"綺麗"という言葉しか出てこない自分の語彙力のなさが悲しい。
そんな時、都合よく?さんがスマホの充電器片手にキョロキョロしだした。もしかして俺の出番か?

「充電っすか?」
『あ、うん。ファミレスならコンセントあるかなって。』
「貸してください!」

不思議そうにスマホと充電器を差し出してくる彼女からそれを受け取り、自分の個性を披露する。

『おぉー、すごーい。』
「へへっ、はいどーぞ。」
『ありがと。』
「そういえば、?さんの個性聞いてもいっすか?」

どんな個性なんだろう。見た目からは全然想像できない。『うんとねー。』と少し悩んだ表情を見せた後にパッと閃いたような顔を見せる。

『私見ないから、どっかにスマホ隠して。』

そう言って目を手で覆って後ろを向く?さん。なにそのポーズ、可愛いな。言われた通りに胸の内ポケットにスマホを隠し「いっすよ。」と声をかける。席を立ってこちらに近付いた彼女は俺に手をかざす。頭から顔を通って胸の前に手が来た時、彼女の前髪が1束ピコンっと跳ね上がった。

『胸ポケット?』
「あ、正解っす。」
『ふふ、私はねダウジング。』
「へー。」

なんとも気のない声が洩れたが、決して?さんの個性に興味がなかったわけではない。ただすぐ顔の目の前で悪戯っぽく笑ったその顔が反則すぎて咄嗟に言葉が出なかった。

「いっすね!災害救助とかで!」
『まぁそうだね、そっち系の事務所に行く予定。』

慌てて取り繕ったように言うと、また優しく微笑まれた。思わず顔が熱くなる。

「やっぱり子供の頃から目指してたんすか、ヒーロー。」
『あー、それは…』

気まずそうに視線を落とされた。やべ、地雷踏んだ?ちょっと浮かれすぎて質問責めにしてたことを後悔する。

『実はね、別にヒーローになりたいって思ってたわけじゃなくて…
雄英も、中学の担任に行けるんだから行った方がいいって言われて入っただけなんだよね。』

中学の担任グッジョブ!それがなきゃ?さんには出逢えてなかったと思うと、心の中で親指を上げざるを得ない。
俺がなにも応えずにいたからか、ハッと気付いたように『ごめんね!』と言われる。

『入学したばっかの1年生に言うことじゃなかったね、こんな夢のない話。』
「や、そんなことないっすよ!」
『でもね、そんなんだから周りのみんなみたいにはノリ切れなくてさ。
毎日なんか楽しいことないかなーって思ってたわけ。』
「はぁ。」
『そしたら今日楽しいことあったわ。』

『ありがとね!』と俺を見て無邪気に笑う。普段は凛としてて"美人"って感じなのに、こうやって笑うと少し幼く見えて"可愛い"が似合う。そんなところがまた俺を夢中にさせる。

『そろそろ帰ろっか。』
「あ、そっすね!」

格好つけて取ろうとした伝票は先にヒラリと取られてしまう。

「俺が!」
『いーよ、先輩だし。』
「でも…」
『その変な敬語がなくなったら、彼氏として奢らせてあげる。』

そう言ってまた笑う。その顔の可愛さもさることながら、?さんの口から出た"彼氏"という言葉にキュンッとしてしまう。俺がぼーっとしてるうちに会計を済ませてしまった?さんを慌てて追いかけた。





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