おねえさまは毎日タイクツ

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えぇっと、オールマイト、オールマイト…できるだけ他のヒーローの邪魔にならないようにぶつかった車に近付いて意識を集中する。……見つけた。

『すみません、ちょっと入っちゃっていいですか?』
「はい、どうぞ。」

近くの警察官に許可をもらい、目的の物を取ってきた。

『はい、これかな?』
「わぁ!おねえちゃん、ありがとう!」
『どういたしまして。』
「やっぱりヒーローはすごいなぁ!」

憧れを含んだキラキラした瞳に見つめられると、たしかにヒーローをするのも楽しいかもなと思う。

「ぼくも絶対絶対ヒーローになるんだ!」
『うん、頑張ってね!』

私より君の方がヒーローに向いてそうだな、なんて思いながらぽんぽんっと少年の頭をなでた。

*****

職場体験で事故現場に遭遇した。初めてのことで、正直プロヒーロー達の指示に従うだけでいっぱいいっぱいだった。少し現場が落ち着いてきて、ふと気づくとここ最近会えてなかった愛しの彼女の姿を見つけた。こんな所で会うだなんて思っていなかったから、会いたすぎてついに幻覚が見えたのかと思った。
ていうか、コスチューム姿えっろ!普段の制服と違って身体のラインがハッキリわかってしまい色々と想像してしまう。いやダメだろアレ。あんな姿がみんなに見られるだなんて…とちょっと嫉妬する。

『はい、これかな?』
「わぁ!おねえちゃん、ありがとう!」

小さな子どもに人形を渡している姿を見て、さっきまでの不純な考えを反省した。3年生とはいえまだプロヒーローでもないのに、あの子はもうすっかり?さんのことを憧れのヒーローとして見ている。やっぱり?さんすげぇ、俺も早くあんな風になりたい。

「ぼくも絶対絶対ヒーローになるんだ!」
『うん、頑張ってね!』

そして俺もあんな風に?さんになでられてぇ。
さっき反省したところだけど、やっぱりコスチューム姿は反則だ。

*****

「では、私達はこれで。」
「はい、ありがとうございました。」

処理も落ち着き、私達は事故現場を離れることになった。電気くんも初めての職場体験なのにちゃんと動けててすごいなぁ、と思う。自分の時はどうだっただろうか、少し懐かしく感じる。さすがにこちらに気付いているようでチラチラとこっちを見ているのはわかっているんだが、私が目を合わせると走ってきてしまいそうな様子だったので気付かないフリをしていた。
去り際にまた視線を感じたのでチラリとそちらを見る。小さく手を振ってみると、ブンブンと大きく手を振ってお見送りされた。
ダメだ、あの子ちょっとアホだ。かわいい。

「もしかして、知り合い?」
『はい、まぁ…』

緩む口元を隠しながら先輩にそう答えた。





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